81 / 194

第81話

席に座った数分後、ブーとブザーが鳴り映画が始まった。 内容は宇宙へ旅立った主人公が無事地球へ戻れるかと言うような何処かで聞いたような洋画だった。 そして最後はお決まりの主人公とヒロインのキス。 蓮条の感想としては内容は普通だったが流石、映像は迫力あり退屈はしなかった。 柏木にも感想を聞くが自分と同意見だった。 「悪くは無いがストーリーはありがちだな。 映像だけな気はする。 それに……決まってキ、キス…で、終るし。」 あれ、なんか顔赤くなったか? キスと言う言葉に詰まる柏木に思わずクスリと笑みが溢れた。 「なぁお前って……」 「な、なんだ?」 「いや、恋愛に耐性ねぇだろ。」 「…………だからどうした!? 悪いか?」 「いや………」 顔を真っ赤にしてうるうるとした目で蓮条を睨む柏木がちょっと可愛いと思ってしまった。 ヤベッ俺こいつとならアリかも知れない。 一瞬そんな考えがよぎったが遠矢兄弟じゃあるまいしゲイじゃないと頭を振る。 「俺は普通だ!!そう普通に」 そう自分に言い聞かせる。 「?どうした?」 「いや、何でもない……」 「そうか……だが今日は楽しかった ありがとう」 柏木はそう言って笑顔を向けてきた。 その不意の笑顔に思わずキュンとしてしまった …………うん。駄目だ、自分はどうかしてしまっている。 「ああそうだ!!なぁこの前はお前の家にお邪魔させてもらったから今度は俺の家にどうだ?」 「え?」 唐突に柏木が自分の家に来ないかと誘う。 「どうせ母は今日は帰ってこないから それに……」 「それに?」 「独りは寂しい。」 「………… じゃあ、お邪魔させて頂きます。」 これを断れる勇気は自分にはない。

ともだちにシェアしよう!