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第108話

真木はそのまま隠れて聞き耳を立てていると和田が何やら喋り始めた。 「久しぶりだね遠矢君。」 「はい。約半年ぶりですね。」 「変わってないね。」 「先輩こそ変わってませんよ。」 懐かしむように和田は玲に語りかける。 その目は恋する瞳で案の定彼はこう言葉を紡ぐ。 「僕、今でも君の事が好きなんだよ?」 その言葉に真木はぎゅっと胸を掴まれる感覚がし手を胸に当てる。 「………すみません。 俺は………。」 和田の告白に玲は言葉に詰まる。 彼を好きではない。 そんな玲の言葉に真木は安心してしまった。 「好きな人がいるんだっけ?」 「はい。」 「付き合ってるの?」 「どうでしょう?」 なにそれ、と笑う和田の眉間には皺が寄っている。 ずっと変わらず玲を好きだったのだと真木は自分の兄への気持ちがは中途半端に思えて途端にモヤモヤするのと胸の奥が苦しくなる。 「その子がそんなにいいんだ?」 和田のその問いに玲は笑みを浮かべハッキリとはい。と答えた。 「あいつは不器用で反抗的で、でもそんな不器用でツンデレな所が可愛くて、やることなすこと全てが愛しい……。 好きで好きで堪らないんです。」 そう恥ずかしげもなく言う玲に思わず涙が出そうになる。 自分は何も返していないのにいつもしてもらうばかりで申し訳無い。 「そっか……なんか妬けちゃうなぁ~。 羨ましいよその子が。」 「すみません。」 「ほんとに……また、君に振られるのは辛い でも待ってる。 君が僕に振り向いてくれるのを。 いつかその子の代わりにでもなれたら……」 「無理ですよ。 誰かの代わりなんていません。 だから和田先輩も俺よりいい人を見つけてください。」 「………君以上の人なんて見つかるわけないだろう?」 和田は泣きそうな顔でそう言うと 「そうですね」とナルシストな玲の返答に思わず和田はクスッと笑った。

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