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第111話

そんなツンデレ真木とデレデレの玲を遠くから見ていたのは 先程2度目の告白をフラれたばかりの和田泉だ。 フラれたばかりでその光景を見るのはやはり面白くはない。 未だ未練がましく玲の姿をそのダークブラウンの瞳が映している。 「遠矢君……」 「無理ですよ彼を振り向かせるのは。」 突然泉が後ろから声をかけられ振り向くと 篝恭也がいた。 「篝君…だっけ……いつも遠矢君と一緒にいた。」 「はい。まぁあいつとは腐れ縁なだけですけど。」 「そう……。」 どうしてここにいるのか、多少疑問に思ったもののそんな事はどうでもよかった。 「もしかして君も遠矢君にフラれたの?」 「どうなんでしょうね? そもそも僕は彼らと同じ土俵にすら立ててませんから。」 残念と言うような笑顔でそう返す篝。 「同じ土俵って、だいたいあの二人兄弟でしょ? 普通だったら恋愛の対象にすらならないと思うけど。」 「ははっ普通だったらそうですけど 玲の場合ブラコンぶりが凄いですから。」 「………それただの兄弟愛なんじゃないの?」 「まぁそうなんでしょうけど 本人にはそんなのどうでもいいんですよ。 ただ愛してる、それだけなんだと思います。」 ただ愛してるだけで兄弟の一線を越えてしまうものなのか理解出来ないけど 男が好きな自分が言えたことではない。 「そっか……なら早く次の恋でも見つけないとなぁ。」 「そうですね、それが賢明だと思います。 引きずれば引きずるほど辛いですから。」 「じゃあ僕とどう?篝君。」 「それは……、考えておきます。」 苦笑いをしながら当たり障りない返事を返す彼に和田は紙とペンを取り何やら書き始めた。 「はい。これ、僕の連絡先。 暇だったら遊ぼうよ 大学生って意外と暇なんだよ?」 「はぁ、まぁいいんですけど 僕生徒会長なんであまり暇無いですよ?」 「そうだったね。 いいよいつでも、待ってる。 じゃあね。」 そう言って泉は恭也を背に帰って行った。

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