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第127話
風呂に入った真木をベッドに寝転がって待つ泉はふと昔の記憶に想いを馳せた。
生意気で口ごたえばかりだった弟の記憶。
けれど何だかんだ言って優しく、自分を頼ってくれた可愛い弟。
なのに飲酒運転の男にまだ小学生だった命を奪われた。
そんな弟を真木と接し忘れかけてた懐かしい思い出が蘇ってきた。
「泉さんお風呂上がった。」
声のする方を見ると風呂に入っていた真木がまだ若干濡れた頭にタオルをかけて戻ってきた。
「ん、お帰り。
それより髪ちゃんと乾かさないとダメだよ
おいで。」
真木を自分の前に座らせてドライヤーをかけた。
髪を染めてるせいか若干痛んでいる。
「はい出来た。」
「なんか俺兄ちゃんと同じことされてる。」
「ふふっ、大切にされてるんだね真木君。
あ、そうだ、歯ブラシはこの新しいの使って。」
「……なんかごめん。
ありがとう。」
「どういたしまして。
じゃ、僕もお風呂入ってくるね。」
そう言って着替えを持って風呂へ向かう。
シャワーを浴びながら湯気で曇った鏡を手で拭って見える自分の顔は綻んだ表情をしていた。
真木と接して弟を思い出しているからだろう。
弟ではないと分かっているが彼の反応や意外に律儀な所をみるととても可愛らしくつい弟のように構ってしまう。
「少しだけいいかな優人 ……」
弟に真木を弟として見てもいいかと許可を取るようにそう呟いた。
風呂を出ると真木は疲れてしまったようでソファで眠っていた。
「ふふっ可愛い。」
彼の寝顔を暫く堪能したあと彼を抱えてベッドへと寝かせた。
すると真木は泉の袖を掴んできた。
「ん……兄…ちゃ……。」
玲と勘違いしてるようだった。
それにしてもこんな可愛い弟を差し置いて浮気だなんて彼は何を考えているんだろう。
篝なら何か知っているのかも知れないが生憎メアドをこちらからは聞いていないと
篝からメールが来るのを祈りながら真木の額にキスをし隣で眠りについた。
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