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第189話

それから高野に教えること数十分。 「やった滑れた!! ありがと、遠矢君!!」 「ああ、ならもういいな。 俺は向こう行。く」 もういいだろうと高野の元から去ろうとしたその瞬間、思いっきり服を引っ張られた。 「なんだよ?」 「いや、折角滑れるようになったから遠矢君と一緒に滑りたいな~って ダメ?」 「別にダメじゃねぇけど、無理。」 「どうして?」 眉を八の字にして玲を見上げる彼女にはっきりとこう言ってやった。 「俺はお前のことクラスメート以外には見てないし 好きな奴がいるからお前と一緒にいるのは無理。」 自分が好きなのは真木だけだ。 だから他の奴に変に期待させることもないとこう告げた。 「そっか……」 彼女はそれだけ言うと玲から離れていった。 これでいい。 今後もこうやって引っ付かれて真木に変な誤解されたくもないから。 そう考えたらなんだか余計に真木に会いたくなった。 楽しいスキーの時間も終わり玲たちは班ごとにこれからお世話になる牧場の方々の家に行くこととなった。 今日は牧場ならではのご馳走を頂いて明日の早朝牧場の手伝いをし帰宅の途へつく予定だ。 明日だ!! 明日真木に会える。 それまでの辛抱だ!! 玲たちのお世話になる中谷さん夫婦は共に50代だそうだ 感じのいい二人で俺たちを笑顔で出迎えてくれた。 娘夫婦が遠くに住んでいて寂しいのもあってか毎年修学旅行生を迎え入れているんだとか。 そして奥さんは何故か玲と篝にやたらと絡んできた。 「貴方たちカッコいいわね~。 私が若かったら良かったのにね~。」 「はぁ……」 「コラ、止めんか困っているだろう。 すまんな、イケメンがきて興奮してるんだ。」 「いえ、お気になさらず……」

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