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第14話
「嫌なこと言われちゃった?」
俺のお腹に手を回しながら優しい声で尋ねる。
˹ いらない子 ˼
小さく頷いた。
「そっか」
彼は一方の手で優しく頭を撫でてくれた。
「俺は˹ いらない子 ˼なんだって」
「……」
「俺はいらないの?みんなそう思ってる?」
「そんなこと」
お腹がギュッと痛い。
紫薫さんの腕…。
「そんなこと、あるはずない」
紫薫さんじゃないみたいな声。
「怒ってるの?」
上を見れば、紫薫さんは辛そうな顔をしていたことに気づく。
「そうだね。でもそれは結糸にじゃないよ」
じゃあ何に?
そう聞く前に彼は口を開けた。
「時計」
「時計…?」
「そう。時計って時を刻んでるよね」
「うん」
「正確にずれなく」
「うん」
「でもほら見てごらん」
視線を促されたのは机上の小さな部品と歯車の山だった。
「時計のなか」
「空っぽ」
「そうだね。中にはこれがいっぱい詰まってる」
「すごいね」
「一個でも欠ければ、時計は動かない」
「そうなの?」
「うん。歯車同士がお互いで回すのを繰り返して機能するからね」
だから結糸、そう言って彼は続けた。
「結糸は歯車なんだよ」
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