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第17話
唇が重なった。
一瞬のことで目を見開いてしまう。
どうして?…分からない。
けど、それは確かに口付けだった。
名残惜しさを残しつつ唇が離れる。
「し、のぶさ…んっ」
そして再度塞がれた。
とても心地良い、優しくて暖かい紫薫さんの口付け。
「好きだよ結糸」
真剣な眼差し、優艷で美しい声、俺の唇を塞いだ唇
ドクッと胸が音を立てる。
俺に向けられたもの。
夢じゃない、夢物語なんかじゃない。
紫薫さんがくれた幻のような幸せな現実。
溢れる涙を彼は拭った。
「綺麗だね」
綺麗なのは貴方です
俺は、貴方の瞳に、貴方に囚われてしまった。
「好きです、紫薫さん」
貴方に救われました。
貴方に悩みました。
貴方に出会って愛を知りました。
紫薫さんはもう一度深い口付けをした。
俺もそれに答えるように、愛を感じあった。
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