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無の音
そして龍空に、俺は問い掛ける。……何時もの事だが、これをしないと虚無に襲われる気がする。
どうしてお前は、無音でしか無い俺に構うんだ、と。
……俺の名前は零音。0の音。無の音。無音。
俺の中には何も無い。優しさだって愛想だって、言葉だって無い。
あるのは肉体という物質的な器と、命という概念的な中身。だがそれだってあやふやだ。
器の中にある命。
その作用が生み出すはずの“心”というものは、俺の中でほぼ死んでしまっている。所々が壊死してしまっている。
叩いても痛みは無い。あるのは無の音。脆弱な静寂の響きだけ。誰にも届かないし、俺には何も解らないし俺は何時まで経っても変われない。
なのにさ、龍空はよくもまあ飽きないよな。反応は通り一辺倒で、言葉も何時も大差ない。目に見える変化も無いし、心が見えるわけでも無い。
壊される側だった俺には、何時だって何も無いんだ。
「俺がお前の傍に居たかったから。居たいと願うから」
……そうだな。お前が今は居るっけな。
そうかと応えて頭を撫でてやって、知識的な優しさだけ龍空に与えてみる。
……不思議だな。
、、、、、、、
知識的な優しさ
それは何だ。俺はまた、よく解らない言葉を創り上げたのか。知識的な優しさって何だ。優しさと呼ばれる行為をただなぞるだけか。形だけだというのか。
……そうだな。きっと、俺は俺自身と同じ様な虚ろな行為しか龍空に渡していないな。
龍空が真実求めているものなんか解らないし、渡せやしない。……だから俺はきっと、それでも良いんだな。
ああ、虚しいな。
、、、
虚しい
俺の存在が虚しいのか、言葉が……それとも行為が虚しいのかは解らないな。それとも、解る必要が無いのか?
可笑しな話だ。
「 」
ああ、止めておこうか。今はそんなことを尋ねても……龍空に答えは無いのだから。
「物好きな馬鹿が」
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