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第2話

____身体が熱い 暫くなかったから大丈夫だと甘くみていた。 目を開けると夢でみた凝った造りの天井だった。部屋は淡い照明が点いていた。外は暗く道を走っていく俥の音が聞こえる。 俺は格子戸に駆け寄り勢いよく開けた。扉の前に志賀が立っていて思わず声が出そうになった。 「なんですか騒々しい」 志賀が俺の首筋に指先で触れた。驚いて身体を後ろに引いたが、思うように動かない。蹌踉けて後ろに倒れそうになるのを志賀が俺の身体を支えた。 「……大丈夫…だ」 「大丈夫ではないでしょう。ベッドに戻って下さい」 「一人で…歩け…る」 俺は志賀の腕を払い、一人で元いたベッドまで歩いた。 志賀はやはり目を引く。なのに無表情と俺に対する言葉遣いが気に食わない。なんだか子供扱いされているみたいでムカつく。 「うわ!」 足がもたついて転びそうになる。志賀が俺の腕を掴んで小さくため息を突いた。 「強情っ張り」 「……んだよ!」 俺は志賀を睨み付けた。志賀は涼しげな目をこちらに向けた。 「子供扱いするな」 「貴方はまだ子供でしょう」 何か言い返そうとしたが、身体の怠さと喉の痛みで断念した。 それより、この状況が本当なのか夢なのか…… * 額に触れる手の感触で目を開けた。夢で見た部屋と同じで、俺を覗く男の端正な顔に驚いて起き上がった。 目覚めたら戻っていると思っていたのに…… 「体調はどうです? 食欲がないのは分かりますが何か召し上がらないと治りませんよ」 「それ何?」 「茶粥です。召し上がられますか?」 「食う」 志賀は茶粥を椀に移しこちらへ手渡した。俺は起き上がって茶粥の入った椀を受け取った。 「ゆっくりお召し上が下さい」 「これおまえが作ったのか?」 「はい、私用の小さな家ですので私しかおりません」 「旨いよ」 「左様でございますか」 志賀の無表情の顔が少し緩んで見えた。その綺麗な顔を横目で見ながらゆっくり茶粥を口に運んだ。空になった椀を志賀に差し出した。 「お代わり」 「はい」 志賀は椀を受けとり茶粥をよそった。俺は椀を受け取ると一口頬張った。 「時久様、聞きたいことがあるのですが」 「ん?」 「これはなんですか?」 「あ! これ」 あの日、里見の知り合いで関西訛りの男がいた。俺と気が合うと思うと里見が言っていた。その時、彼がくれた物だった。後で聞いた話だか、彼は大手菓子メーカーの息子なんだと里見が言っていた。 なんでオマケ付きのお菓子がここに? 「貴方がお倒れになる前、部屋で落とされました。失礼ながら調べさせて頂きましたが、このような菓子は存在しません。なぜ、貴方が?」 時久の意識に100年後の知久()が入り込んで、それは未来ものだと言えばいいのか? この男が非現実的な話など信じてくれるとは思えない。 「今は言いたくない。それよりこの時代の推移が知りたい」 「推移?」 「青木とこの時代の歴史について知りたい。協力してくれる?」 志賀は俺を探るような目をしたが、小さくため息を吐いた。 「今始まった事ではないですから。それに、旦那様がご心配なされております。体調がよろしければ、邸宅へ戻られてはいかがですか?」 「そうだな一度帰るよ」 「では、準備して参ります」 俺が頷くと志賀は部屋を出ていった。

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