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第4話

「若様!」 「やべっ!」 志賀が冷ややかな目でこちらを見ていた。小さくため息を吐くと持っていた本を閉じた。 「若様、居眠りですか。貴方が青木子爵家についてお知りになりたいと仰ったのですよ」 「分かってるよ! 小煩い家令だなぁ」 「貴方の言葉遣い私は兎も角、旦那様や他の使用人の前ではお止め下さい。これも追加します」 「はぁ?! 俺は理系なんだよ。ああ、頭痛がしてきた」 「残念ですが時久様は文乙です。ですから」 「はいはい、読めばいいんだろ」 何か言いかけて志賀が口を閉じた。俺が目線を向けると視線を逸らす。 「何も聞かないんだな」 「若様が言いたくないと仰ったでしょう。 また参りますから、今度は居眠りなさらないで下さいね」 志賀の背中を目で追った。容姿と立ち振る舞いは完璧なのに…… 「本当、ムカつくやつ!」 * 「ああ~ やっと終わった」 最後の分厚い本を読み終え背表紙を閉じた。辺りはもう暗くなっていて、今気付いた空腹感に項垂れた。 「腹減ったな」 志賀のやつ何処にいった? 書斎からそっと広い廊下を伺った。現代では資料館になっていそうな邸宅で、無駄がなく豪邸にしては殺風景だった。どこからか声が聞こえ、俺は書斎から出て周囲を見渡した。 数歩先のドアが少し開いていて、中の声が外に漏れていた。そのドアに近付き中を覗いた。よく聞こえなかった声が志賀ともう一人は____ 「……旦那様、お止め下さい」 「おまえは本当に悠樹に似ているな……」 「……っん!」 広い机に志賀が腰掛け、旦那様と呼ばれた男はこちらに背を向けいて顔が見えない。抵抗する志賀に男は構わず唇を合わせキスをする。男の唇が志賀首の筋へ移り、ネクタイに手を掛け解いた。シャツの間から覗く白い肌に男の手が触れる。 俺は志賀を助けようとドアノブを掴んだ。志賀と目が合い、来るなと強い目でこちらを睨んでいた。男との淫らな行為中、志賀はずっと俺から目を離さない。俺は元の書斎に駆け戻った。 俺を見る志賀の目……おまえも同じだろうと言われているみたいだった。

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