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幾つもの春が通り過ぎて1
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15の春から幾つもの季節が通り過ぎて、俺は22歳になっていた。
心も躰も、少年から青年になった。
もう抵抗できない、か弱い少年ではないのだ。
なのに…帝、あなたには逆らえないままだ。
臣下に下された俺にとっては、帝の命令は絶対だから…
あなたはあの春の夜、まだ何も知らなかった幼い俺を無理矢理奪って、あなたのものにしてしまった。
あの日から俺を好きなように抱き続けている。
どうして手放してくれない?
俺はもうあなたの手から逃れたいのに。
もう耐えられない…壊れてしまいそうになる!
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「洋月の君様、御文が届いております」
読まなくても分かる。
この文が誰から届いたものか。
焚かれた高貴な香 の香りが俺を追い詰める。
文に添えられた牡丹が一輪、俺の心臓を貫く。
この文を手にした途端、俺の躰からは今日も見えない血の涙が流れていく。
「今宵も行かねばならぬのか…」
牡丹からの呼び出しに、暗く深いため息を漏らしてしまう。
「洋月の君、そんなに暗いため息を漏らしてどうした?さては女子 からの女々しい恨み言でも?妹の他に何人女子がいるのだか…流石、光る君といわれるだけあって都一の色男だよな」
振り向くと優しい眼差しがあった。
見られていたのか。
慌てて文を後ろに隠し取り繕う。
「丈の中将が盗み見か?全く呆れるな」
相手は丈の中将 だ。
俺の形だけの妻、桔梗の上の実兄で、いつも弟のように俺を可愛がってくれている。
また宮中では同世代で同じような身分であることから、無二の親友でも通っている存在だ。
「して今宵の姫はどんな方だ?義兄にだけそっと教えろよ。なぁいいだろ?」
「ち…違う!」
的外れな推測に思わず苦笑してしまう。
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