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怒りを受け止めて

丈の中将と別れひとりで乗り込んだ牛車の中は、広いのに息苦しい。 一緒に帰りたかった。 ひとりで行きたくない。 そんな我儘を言えるはずがない。 あの人は、父であっても帝だ。 帝の命令は絶対だから。 **** 「洋月の君様…着きました」 「此処は?」 てっきり清涼殿(内裏・帝の住居)に着いたと思って見上げると、そこは普段は使っていない「土御門殿」(里内裏・臨時の住居)の方だった。 何故ここに? この内裏は人気がなく寂しくあまり使わないのに… 嫌な予感がして足取りが更に重くなる。 女房に一番奥の部屋に通される。 「人払いを」 奥から怒りを含んだ声が聞こえてくる。 牡丹が御簾の向こうから俺を睨んでいる。怖くて直視出来ない。 「洋月の君、こちらへ来なさい」 「…はい」 俺は御簾の前に座る。 「昨夜のことはなんだ?」 「それはっ…書鳩により、連絡が行ったはずです…」 「ずっと誰と一緒だった?」 「…」 「ふっ…私に言えないような何かがあったのか?相手なぞすぐにばれるものを。隠せば隠すほど不利になるぞ」 「…あっ…義兄と一緒でした」 「丈の中将と?」 「…はい。鷹狩の途中で雷雨に遭い、雨宿りをいたしました。その後、熱を出してしまって…意識を失ってしまった私を看病してくれました」 「ふんっ言い訳など聞かぬ。まぁいい。その躰で身の潔白を証明せよ」 「えっ…」 「今すぐ脱げ、すべてをだ」 「…」 どう抗っても選ぶ道は一つ。 そのまま素直に従うしかない。 それに丈の中将とは何もやましいことはなかった。 朝まで肌を合わせてくれたのは、寒さを凌ぐための緊急事態だったから。 何よりも俺が戸惑うことにより、丈の中将に被害がいくようなことになっては嫌だ。 守りたい、あの陽だまりのような君を… 「分かりました」 俺は無言で着物を脱ぎ棄て、一糸まとわぬ姿になっていく… 恥ずかしいとかそういう感覚は、もう牡丹の前では麻痺していた。 「これでよろしいでしょうか」 御簾越しに俺を見つめる牡丹の眼の色がぎらりと光る。 「こちらへ来て、そこへ伏せなさい」 御簾の中へ入ると四つん這いになるように指示される。 飼いならされた獣のような姿勢に屈辱で涙が出そうになるが、ぐっと我慢して目を閉じる。 「確かめてやろう」 俺の顎を掴み、上を向かせるとぐちゅっと唇を押し当ててくる。 そのまま牡丹は手を動かし、乳首を弄り、腹を撫で、下腹部を愛撫し出した。 「あっあ…」 突然濡れてもいない蕾にいきなり乾いた指を突っ込まれ、鈍痛が躰を突き受けた。 「くっ…」 痛い! 急には無理だ…何故こんなに乱暴に? 浅く息をはぁはぁと繰り返し、痛みをやり過ごすしかなかった。 大きな声は出すまい… 恥ずかしい…こんなあさましい姿を、人に見られるのは。 牡丹はその指で中をくちゃくちゃといやらしくかき回し、一気に抜いた。 指に何もつかないことを確かめたようだ。 「ふんっ本当に何もなかったようだな」 当たり前だ。俺にこんな酷いことをするのは、あなたしかいない。 「このまま褒美に抱いてやろう」 笑わせるな…褒美?これが? 俺を蔑んで、屈辱を与える行為が褒美だなんて、ふざけないで欲しい。 「さぁ来なさい」 「あっ…」 思わず切ない声が上がってしまう。引きずられるように寝所へ乱暴に連れて行かれ乱暴に押し倒される。 「…」 俺の口は貝のように閉じたままなのに、牡丹は喘ぎ声をあげさせようと、しつこくしつこく愛撫を繰り返す。 「ひっ」 弱くなった乳首を押しつぶされ、悲鳴に似た声があがってしまう。 「もっと声を出しなさい。洋月…」 あぁ今宵は酷くなりそうだ。 わざわざ人気のない「土御門殿」での情事を選んだのだから… 耐えられるのか、こんな仕打ち… 7年もの間繰り返される 牡丹との秘め事の罪深さに溺れそうになっている… 早く消えてしまいたい。 こんな人生、もう捨ててしまいたい。 いつになったら終わるのだ。 明けない夜があの日からずっと続いている。

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