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第124話

「深く帽子被ってグラサンでツラ隠してたけど、ありゃ、お前とカネに間違いねえ。あんな目立つ街中で野郎二人連れでラブホってさ? お前ら、案外賢そうなのに随分度胸いいことすんなって、ちょっと意外だったぜ。ま、そんな危険冒してまで我慢がきかねえくらい欲してたってことか――?」 「な……に言って……」 「付き合ってんだろ、お前ら?」  あまりに驚いてか、一瞬呆然となった隙をつかれて素早く腕をひねり上げられて、すかさず氷川の足元で膝を付かされてしまった。そして学ランを捲くり下ろすように両肩から脱がされたと思ったら、それで両腕を縛り上げられて、完全に動きを奪われてしまった。 「何しやがるてめえ……!」  抵抗もむなしく、いつの間に探り当てられたのか、気付けば胸ポケットから携帯を抜き取られて焦る。慣れた手つきで氷川がそれを弄っているのを横目にしながら、力一杯もがけども、身動きもままならない。 「は、やっぱカネの携番が一番上じゃねえか」  ニヤニヤと意味ありげに笑いながら登録メモリーを探られている様子にブチ切れた。 「何やってんだてめえッ! 他人の携帯、勝手に弄ってんじゃねえよっ! 返せったら、このヤロー!」 「ああ、無駄に暴れねえ方が身の為だぜ。そう簡単には解けねえように縛らしてもらったから! それより一之宮。俺の仲間がてめえらに悪さした詫びってわけじゃねえが――今からちょっとイイことしてやんよ」  氷川はそう言うと、突如後方から抱き付き、いきなりシャツを引き裂いてみせた。 「……ッ!? 何……すんだ、てめっ……!?」  引き千切られたシャツの合間から素肌が覗く。驚く間もなく首筋を生温かい吐息が掠め、耳たぶに氷川の唇が触れた。予想だにしない展開にギョッとなり、硬直させられてしまう――。 「ふざけて……んじゃねえぞっ!」 「声、裏返ってんぜ?」  一対一の番格勝負だったはずがこの展開は何だ、と焦ってみても驚きが先立って思考が回らない。驚愕に硬直する様子を面白がるように、氷川は先程取上げた携帯を目の前へと差し出すと、 「カネの奴、もう退院したんじゃね? 今頃は家に帰ってっかな? それともお前がいなくて心配してっかもな? だからよ――」 ――今から電話してココに呼び出してやろうか?  その言葉にますます硬直させられてしまった。いったいこの男は何を考えているというのだ。氷川の意図がまるで読めずに戸惑うばかりだ。  身動きがとれない歯がゆさも相まってか、それ以上は抵抗も反撃もできずに、悔しさを噛み締めるしか術はない。そんな様子にますます満足げに、目の前に差し出された携帯の通話ボタンが押される。 「鐘崎か?」  電話が通じた様子に、氷川に抱き締められたままで蒼白となった。 「――鐘崎か? 無事退院したのか?」  聞き慣れないその声に、電話の向こうではしばしの沈黙の様子が窺える。 『――誰だ、てめえ』  グッと落とされた低い声のトーンでそう返ってきた返事に、その応対を面白がるような、あるいは満足だといったような調子でクスッと鼻先で笑む氷川の様子が目に入る。 『てめえ、誰だって訊いてんだ! なんでその電話を持ってる!?』  番号の通知で相手を知ったのだろう。本来、一之宮紫月が持っているはずの電話から違う男の声がすることに遼二は焦ったようであった。 「まあそう急くな。電話の持ち主はちゃんとここにいるよ。てめえの相棒、一之宮紫月――」 『――――ッ!? 何言ってやがるっ! 紫月と一緒ってどういうことだ……てめえ誰だっつってんだっ!』

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