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第136話

 そんな様子を横目に、帝斗はクスッと笑うと、 「ね、驚いたろう? こちらは如月遼平と織田紫苑だ。つい先日に四天学園高等部を卒業したばかりのウチの秘蔵っ子たちさ」  固まったままの二人に向けてそう紹介した。  そして、今度は遼平ら四人に向かって、連れて来た二人を紹介する。 「こちらはギタリストの清水剛さんとベーシストの橘京さんだ。二人はずっとアジア各地で活躍中の有名バンドに付いてフリー奏者として活動してきたベテランだよ」  そう言われて、遼平ら四人は揃ってペコッと頭を下げる。帝斗はもうひと言を付け足した。 「この二人はね、遼二と紫月の同級生なんだ。勿論、僕や白夜、そして倫とも二十年来の良き親友だ」  なるほど――そういうわけだったのか。だから今しがた、会った途端に「遼二」「紫月」と彼らが口走った意味が分かった。そんな二人の意を汲んでか、遼平と紫苑は彼らの前へと歩み出ると、再度丁寧に頭を下げながら握手の手を差し出した。 「如月遼平です」 「織田紫苑です」  一先ずは自己紹介をしながら、 「あの、やっぱりそんなに似てますか?」  少し照れたように頭を掻きながらそう訊いた。すると、剛と京の二人はようやく我に返ったようにして瞳をパチクリとさせ、今度はいささか興奮気味に頬を紅潮させながら言った。 「や、似てる……なんてもんじゃねえぜ……。帝斗たちから話には聞いてたけど……」 「まさかこんなにソックリだとは……夢でも見てるんじゃねえかって気分だ」 「なあ、マジで遼二と紫月……じゃねんだよな?」 「つか、お前ら、年取らねえな……。あの頃のまんまだ」  夢幻でも見るような感じで高揚しつつも、ものすごく不思議そうに首を傾げている。遼平も紫苑も照れつつも苦笑状態だ。 「な、俺ら……老けたろ?」  思わずそんなことを言ってのけた剛に、帝斗も倫周も破顔しながら苦笑している。ふと、意外なことを口走ったのは紫苑だった。 「変わってねえよ。渋さが増して、ますますイイ男になってるぜ」 ――え!?  剛と京は無論のこと、その場にいた誰もが驚いたようにして一斉に紫苑を見やった。 「あ……えっと、あー、すいません。ちょっと調子に乗りました!」  思い切りバツの悪そうにパンッと顔前で手を合わせて舌を出し、 「もしかして紫月さんならそんなふうに言うかなって……思ったんです」  言い訳をしながら申し訳なさそうに頭を下げる。そんな彼の気遣いが充分伝わったのか、剛も京も思わず目頭が熱くなるといったように瞳を細めると、 「嬉しいぜ……! そうか、俺ら渋みが増したか!」 「だろだろ? イイ男になったろうが!」  二人共に思い切り嬉しそうに破顔しながら、とびきりの笑顔のままで涙を拭った。 「ありがとな、紫苑! それから遼平――」 「お前らとバンドが組めるなんて夢のようだぜ……! ほんとに、こんな嬉しいことはねえよ――!」  そう言って思い切り抱き付くと、剛は紫苑に、京は遼平を抱き締めるようにしてハグをした。 「氷川にサプライズで渡すっていうプロモの話も帝斗から聞いてるぜ!」 「最高の演奏で盛り立てっから! これからよろしくな!」  未だ涙声で、だがこれ以上の至福はないといった笑顔でそう言った二人に、遼平と紫苑もがっしりとハグで受け止めながら頷いた。 「よろしくお願いします!」  彼らの様子を後方で見守っていた春日野と徳永も、心から嬉しそうで、しばし部屋の中には幸せの笑い声があふれて止まなかった。 ◇    ◇    ◇

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