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第137話

 そうして迎えたライブ当日――頃は若葉が青葉に変わる緑萌ゆる季節だ。氷川が購入したという埠頭の煉瓦色の倉庫は、すっかりライブ会場として設営が施され、朝から楽器や音響機材なども続々と持ち込まれて活気に包まれていた。  遼平と紫苑、そして春日野に徳永と剛、京も加わったライブメンバー六人は、即席ながらも既に永年一緒にいるような強い絆が生まれ始めている。氷川が買い取って改装したという例の花時計広場前のレストランで昼食を済ませると、そのまま会場入りした。 「やあ、来たね。会場の感じはどうだい? 気に入ってくれたかな」  既に社長の帝斗と倫周も来ていて、最終チェックに余念がない。 「はい……。改めて見るとすげえデケえ会場で……」 「やべ……緊張してきた」  遼平と紫苑が口々にそんなことを言ったのに、剛と京が余裕の微笑みで二人の肩に腕を回してガッシリと包み込む。 「おっし! 俺が解してやるわ!」  肩をグイグイっと揉む仕草をして、また笑う。賑やかなこの二人に一気に場が和むようだった。そんな様子を横目に、帝斗がクスクスと可笑しそうに笑っていた。 「剛も京もほんと変わってないよね。そうやってワイワイしてるところも、やんちゃなところも二十年前のままだな」 「おいおい、それって全然成長してねえってことー? 帝斗も相変わらずだな!」 「帝斗って紳士に見えて、意外と毒舌家なんだよ。それも二十年前から変わってねえー!」  剛と京が腹を抱えて笑いつつも、揚げ足を取るようにそう言えば、 「褒められてんだろ? つまりお前ら二人、まだまだ若えってことだ」  ものすごく自然な調子でそう口走った遼平に、皆一斉に驚いた表情で彼を見やる。 「あ……? 今、俺何か言いました?」  当の遼平はポカンとしたように皆を見つめ返しながら首を傾げつつも、もしかしたら自身の中の『遼二』がそう言いたかったのかも知れない――ふとそう思った遼平は、照れ臭そうにしながら頭を掻いた。 「多分、今の遼二さんッス! 俺ン中の遼二さんがそう思ったんじゃないかと――」  そんな彼を取り囲みながら、帝斗をはじめとした皆が嬉しそうに、そして穏やかに微笑んでいた。 「さあ、じゃあ軽く通しでリハーサル行ってみようか!」  帝斗の頼もしげな掛け声に、現場のスタッフらが慌ただしくセッティングに入る。 「リハが済んだら軽く夕飯を摂って、その後メイクと着替えだ。夕方六時に会場をオープンして観客の皆さんを誘導、六時半から本番スタート。いいな?」  帝斗が今一度、最終的なスケジュールを説明し、いよいよリハーサルに突入だ。ステージへと上がる前に、遼平と紫苑は帝斗のところへ駆け寄ると、 「あの、社長! 氷川さんは何時頃に会場入りされるんでしょうか」そう訊いた。 「ああ、白夜には五時半頃までには入ってくれって伝えてある。開場の少し前には到着できるだろう」 「そうですか。ありがとうございます!」 「俺ら、精一杯やりますんで……! 皆さん、どうぞよろしくお願いします!」  メインボーカルであり、元々のJADEITEメンバーである遼平と紫苑が丁寧にそう頭を下げると、スタッフらから一斉に拍手が湧き起こった。 ◇    ◇    ◇  そして午後五時を回った頃。  メンバー全員のメイクと着替えも済み、いよいよの初舞台を目前に、バックステージのテントの中では遼平らが緊張を解すように和やかにじゃれ合ったりしていた。 「ほれ、リラックス、リラックス!」 「もっかい肩揉んでやっか?」  場慣れしている剛と京にスキンシップで励まされて、遼平ら若者組の四人からも笑顔が漏れる。と、そこへ「お客様がお見えです」テントの入り口でそう声が掛かった様子に、皆一斉にそちらを振り返った。

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