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「お前さ‥‥‥」 将希が眉間に皺を寄せた。僕は怒られると察知し、とっさに身構える。 「思わせぶりな態度取るのも、良い加減にしろよ。反省しないやつだな」  案の定、将希が静かに怒り出す。 「前回だって、お前が隣の部屋のやつに無駄に話しかけたりするから、その気になったんじゃないか」  今時、アパートの住人同士で挨拶するのも稀らしく、その隣人は僕が気があるから話しかけて来たと勘違いしたらしい。  僕は普通に挨拶しているだけのつもりで、それが当たり前だとしか思っていなかった。  まさか、部屋にまで入り込まれてしまうとは思ってもみず、襲われそうになった時は一貫の終わりとまで思った。  たまたま、警察官が巡回連絡で訪ねて来た事で難を逃れたが、引っ越しを余儀なくされてしまった。 「自覚ないのが酷いな。普通、初対面のやつを家に入れないから。たとえ相手が警察官だろうとな」  将希が呆れたように溜息を吐く。僕には警戒心のカケラもないと言いたいのだろうか。  これ以上、説教されるのはごめんだと僕は慌てて、話題を切り替える。 「そ、そういえば、春休みに入ったから明日初めて夜勤入るんだよね」 「バイトってコンビニか?」  僕は大学の近くにあり、自宅から徒歩20分ほどのフランチャイズのコンビニで週3日バイトをしている。  いつもなら夕方の学校終わりに入るのだが、春休みに入ったことで、一気に稼いでおこうという魂胆だ。 「そうだよ。初めてだから不安だけど、稼げるから」 「夜遅いなら、なおさら気をつけろよ」  そう言って将希がチラッと腕時計を見ると、そろそろ帰ると腰を上げる。 「えっ、もう帰るのか?  いつも帰るの早いよな」  僕は、少し拗ねたような口調になってしまう。 「どうせ、また来るんだし‥‥‥俺も家遠いんだからしょうがないだろ」  じゃあ泊まっていけば良いのにと、思うのだが言ったら言ったで怒られそうなので黙る。

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