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 まだ夜の9時過ぎなのに、将希は帰ってしまった。  せっかく僕は一人暮らしをしていて、昼夜問わずに遊べるというのに、何故か将希は夜には帰ってしまう。  一度聞いた時に「こんな狭い部屋に泊まるなんて、むさ苦しくて嫌だ」と返されてしまい、ぐうの音も出なかった。  確かに泊まるにしては狭いかもしれない。ベットも一つしかないし、僕は別に一緒に寝ても構わないが将希は嫌がる。  一人残された寂しい部屋で、バラエティ番組で気を紛らわしていると、稔さんからメールが届く。 『今日はありがとう。鍵見つかって良かったね』と簡単な文章だが、とても胸がときめく。  きっと恋する乙女はこんな気分で、画面を見つめるんだろうなと思うと、口元がにやけてしまう。  恋ではないが、警察官というと職業に惹かれてしまう。  すぐさま『こちらこそありがとうございます!』と返事をする。  間をおかずに『いえいえ。また仕事が終わったら連絡するね』と返ってきて、こんな時間まで仕事してるのかと更に尊敬してしまう。  自分も学生をしながらバイトをしているが、たかが週3のコンビニバイトじゃあ雲泥の差だ。  将来の目標もなく、ただ海に漂う大木の如くのらり くらりと生きてきた。  命をかけてまで市民を守ろうという、正義感は僕には全くなく、稔さんが立派な人間に見えてしまう。  自分も頑張らなきゃと思いつつも、具体的なことは考えもせず、ぼんやりとテレビを見つめ一人笑った。

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