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「今度は僕から襲いたくなっちゃうからね」
稔さんが恥ずかしそうに視線を逸らす。僕も恥ずかしくなり、何も言えなくなる。
「じゃあ、また連絡するね」
そう言い残し、稔さんは帰って行ってしまった。
僕は玄関先で見送ると、ベッドに戻り倒れ込む。これは夢なのか、現実なのか分からないぐらい頭が混乱していていた。
次第に瞼が重くなり、疲れも相まってか、僕は深い眠りに落ちてしまった。
「おい。大丈夫か?」
揺さぶられた衝撃で僕は目を覚ます。急な頭痛が襲いかかり、いてっ!と声を上げる。そのうえ、腰まで重だるい。
「酒臭いな。お前‥‥‥酒飲んだのか?」
視線を向けると、将希が驚いた顔で僕の顔を見つめていた。
「なんで‥‥‥いるの?」
将希とは約束してない筈だ。僕はのろのろと体を起こす。
「何度も連絡したのに返事がないからだろ。お前、今日バイトじゃないのか?」
呆れ返った声で言われ気がつく。
そうだった、今日の夜また夜勤が入っていたのだ。
今何時なのか分からず、慌ててスマホの画面を見る。
すでに夕方の5時を過ぎていて、よっぽど疲れていたのだと思い知らされる。
「ごめん。来てくれて助かった」
僕はズキズキと痛む頭を抱えつつ、起き上がる。将希が黙って水の入ったコップを差し出してくれて、僕はそれを一気に飲み干した。
「一体何があったんだ? 酒の飲めないお前が飲むなんておかしいだろ」
眉間に皺を寄せ、将希少し憤っているようだった。
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