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「玲くんは本当に優しいね」  僕の目を見て、稔さんが力なく微笑む。 「……僕はね、君を守りたかっただけなんだ」  稔さんが俯き、視線を彷徨わせはじめる。 「決して君に迷惑をかけるつもりはなかったんだ」 「なんで僕なんですか?」  恐怖や嫌悪感以上に、僕はそっちのほうが気になってしまう。 「僕は一つのことに夢中になると、自分でも恐ろしくなるぐらい執着してしまってね。高校の校庭で君をファインダー越しに見た時、一目惚れしてしまったんだ」  僕は息を飲む。一目惚れって、僕なんかになんで……。 「自然の景色に溶け込めるぐらい、君は眩しく、綺麗だったんだ。自分じゃ気づいていないだろうけど……」  想像の斜め上な告白に、僕は唖然としてしまう。 「それからは、君から目が離せなくなってしまった。でも、君には時仲くんがいたから近づけなかった」 「将希とはどうやって、知り合ったんですか?」  同じ高校だということは分かったけれど、2歳も年の離れた先輩と知り合うのはなかなか難しい。 「部活が同じだったんだ。時仲くんが写真部とは聞いてない?」  そういえば、将希の家にはカメラや写真集などが部屋の棚に並べられていた。部活があるからと言って、僕と帰りが別になることもあった。 「で、でも、知り合いなら知り合いって、言ってくれれば良かったじゃないですか」  将希のことも僕のことも、何で隠して近づいてきたのか分からない。 「君の近くにいつも時仲くんがいたじゃないか。僕の過去を知っている彼が、君に話してしまったら……君に嫌われてしまうのが怖かったんだ」  稔さんの体が、微かに震えていた。 「だから……」  稔さんが目元を赤く染め、僕を見つめ震える唇で言葉を続けた。 「警察官になって、君を影から見守ろうと決めたんだ」  将希が来る前に、稔さんが僕に発した言葉が脳裏を過る。  僕だけの為にそこまでしたのかと、思わず拍子抜けしてしまう。

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