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ただならぬ雰囲気に僕は、ベッドから降りようと体を前に出す。
将希はすかさず、僕を押し倒し覆いかぶさってきた。
「や、やめろって! 僕が悪かったからさ」
僕は恐怖のあまり、涙が勝手に出てきてしまう。両手首を掴まれるとベッドに押し付けられ、鈍い痛みが走った。僕は思わず顔を顰める。
もがこうにも、ビクともしなくて僕は初めて親友に危険感を覚えた。
僕の事を守り続けてくれた親友が、今では獲物を捕らえた獣のように僕を見下ろしている。
「まさきっ‥‥‥お願いだから‥‥‥どいてくれ」
僕は必死に懇願する。涙がとめどなく溢れ出し、嗚咽が溢れる。
「大丈夫。大人しくしてれば、酷くしないよ」
僕の願いは虚しく打ち砕かれ、将希の顔が近づいてくる。僕は咄嗟に顔を横に向ける。
それでも、将希が無理やり唇を合わせてくる。
吸い付くような口付けに、親友の中にある僕への執着心に気付かされる。
「んんっ‥‥‥」
唇を固く結び、舌を入れられないように必死に抵抗する。
将希は諦めて顔を離すと、僕の首筋に舌を這わす。
「お願いだからっ‥‥‥やめて‥‥‥」
僕は涙をこぼし、必死に訴えかける。
将希がゆっくり体を起こす。眼鏡の奥の瞳には欲望の色が見え隠れしていた。
手を離されホッとするも、手首を強く握られていた事でじんじんと痛む。
「あいつに酒飲まされたからヤッたんだろ。俺とは酒飲まなかったくせに‥‥‥。なんであいつなら良いわけ?」
将希が乱れた前髪をかきあげる。
僕は何も反論出来ず、ただ強く奥歯を噛み締める。
将希の手が僕のシャツの下から忍び込んでくる。僕は必死で抵抗するも、シャツをたくし上げられてしまう。
将希が僕の晒された肌に視線を向けると、ピタリと動きを止めた。
突然の沈黙に、僕は将希の視線を追う。
至る所に稔さんが残した、いくつもの情交の痕がほんのりと紅く色づいていた。
薄くなっているものの、明らかにそれだと分かってしまう。
将希の顔が真っ青になり、唇を噛み締めている。
僕は見ていられず、視線を逸らし俯くしか出来ない。
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