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 稔さんが将希の後ろに回した手に、手錠を掛けようとしているのだろう。腰のホルダーに手を伸ばす。 「み、稔さん‥‥‥将希を離してください」  自然と言葉が溢れだし、体がガタガタと震えてしまう。  稔さんが驚いた顔で僕を見つめ、暴れていた将希も動きを止めた。 「ーーそもそも、僕が悪いんだ‥‥‥将希の気持ちに気づかないで、ずっと甘え続けて‥‥‥」  僕は目眩がする中、震える唇で続ける。 「将希がこうなってしまったのも、僕のせいなんだ。将希は何も悪くない。僕は‥‥‥殺されて当然の事をしてきた‥‥‥」  唇を強く噛み締める。ほんのりと血の味が口の中に広がってくる。 「‥‥‥玲くん」  稔さんが悲しそうな顔で俯き、ゆっくりと将希から離れる。  将希はのろのろと体を起こすと、落ちていた眼鏡を拾った。  重苦しい沈黙が部屋全体を覆い、僕は震える体を自ら抱き締める。 「将希‥‥‥本当にごめん。謝っても許されないことはわかってる‥‥‥」  体が錆びついてしまったように動けず、ひたすら悔しさと悲しさに涙を流す。震える唇から嗚咽が溢れ、抑え込もうにも喉がヒクついてしまう。 「‥‥‥もう、いい」  それだけ言い残すと、将希はフラフラと覚束ない足取りで部屋を出て行ってしまう。 「まさき‥‥‥」  自然に玄関の扉が閉じられ、将希の姿が見えなくなってしまう。六年間も側で支えてくれた親友を、僕のせいで深い傷を負わせてしまったのだ。  僕は気づいたら泣き叫んでいた。稔さんが僕を抱きしめて、背中をさすってくれる。 「大丈夫だから。これからは僕がずっと君を守るからね」  優しく、宥めるような口調で稔さんが囁く。それでも、全くもって僕の心は落ち着かない。逆に荒れ狂う波のように、僕の心はささくれ立つ。 「なんで‥‥‥なんで、助けになんか来たんですか‥‥‥」  僕は震える声で訴えると、稔さんを睨みつける。  助けてくれた人にそんな対応は筋違いだと分かっている。でも、僕はどうしようもないぐらいに憤りを感じていた。 「玲くん‥‥‥」  稔さんは悲しそうな顔で、僕を見つめていた。

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