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「稔さんの仕事に支障が出ても困りますし。稔さんが言ってたように、異動になった後はもっと怪しまれますよ」
僕は稔さんの仕事を理由に牽制する。
「近々、僕もそっちの家に引っ越します。そしたら、稔さんも安心なんじゃないですか?」
「そうだね」
稔さんがぽつりと呟く。
どこか浮かない表情が、街灯に照らされる度に現れる。
「僕のこと信用してもらえませんか? 僕は稔さんが好きですよ」
稔さんが驚いた顔で僕を見る。
「だからこそ、稔さんが面倒事に巻き込まれてほしくないんです」
さすがにアパートに差し掛かったので、僕は手を離す。
「稔さんの話も聞きたいので、上がっていってください」
僕は部屋の扉を開けて、稔さんを促した。
「コーヒーで良いですか?」
ベッドに腰掛ける、稔さんに問いかける。
「ありがとう。大丈夫だよ」
コーヒーを作ると、僕はマグカップをテーブルに乗せた。
部屋中がコーヒーの香ばしい匂いに満たされて、少し心が落ち着く。
「稔さんの話ってなんですか?」
稔さんの隣に腰掛けながら、僕は問いかける。
「来月の中旬に休みを、二日間取れることになってね。良かったら旅行に行かないか?」
突然の提案に僕は、驚いて稔さんを見つめる。
「引越し前でバタバタかもしれないけど、職業柄なかなか連休なんてとれないからね。次いつ連休が取れるかわからないし」
稔さんが切ない表情で、俯いてしまう。
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