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和やかなムードのまま、高速を下りる。
都会の喧騒から離れて、緑の山々に囲まれた観光地が見えてきた。
「連休開けで、空いてるね」
道路は確かに空いていて、人の姿がまばらだった。
「まだ、チェックインまでに時間があるから、ちょっと寄り道しようか」
稔さんが、近くのパーキングに車を止めた。
車から降りると、澄んだ春の香りが鼻先を掠める。
生暖かい風が気持ち良くて、つい頬が緩んでしまう。
川が流れている横道は桜並木になっていた。二人でその道を歩きながら、お店が建ち並ぶ通りを目指す。
桜はとっくに葉桜に変わっていて、緑葉が陽の光に照らされて輝いていた。
「来年は春に来よう。この辺りは桜が名所みたいだね」
稔さんが少し残念そうに言いつつも、楽しそうに話しかけてくる。
今だけでなく、これから先も一緒にいるという物言いに、僕は嬉しさと恥ずかしさが胸に湧き上がる。
稔さんがデジカメを持ってきていたので、写真を撮ってくれる。あまり、カメラ慣れしていないので恥ずかしく、やや俯き気味になってしまう。
「玲くんはどんな表情でも、素敵だから大丈夫だよ」
稔さんはそんな僕にお構いなしに、惚気全開で撮りま くる。
さすがは、カメラを長年やっていただけあって、構え方からして様になっていた。
お店が建ち並ぶ通りに着くと、ブラブラと買い物と食べ歩きを楽しむ。
迷惑をかけたバイト先に何か買って行こうと、何種類かお土産も買った。
ふと、将希の分はどうしようと咄嗟に考えてしまい、慌てて思考を振り払う。
将希が旅行に行った際に、よくお土産を買って来てくれていた。
自分も旅行に行く際には、買わなきゃと思っていた。でも、その機会がもう二度と訪れないのだ。
浮かれていた僕の気持ちが、再び沈み込んでしまう。
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