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 僕は逆上せたように体全体が熱くなる。自分なんかのために、そこまで考えて来てくれたなんて‥‥‥。それと同時に、不安が襲いかかってくる。  もし、稔さんが僕以上の何かに夢中になってしまったら、捨てられてしまうのではないだろうか。  僕はそもそも稔さんだから付き合ったのであって、男の人が好きなわけではない。だからこそ、別れてしまったらどうすれば良いのか、分からなくなってしまう。 「もしもーー僕以上に夢中になる物ができたら、どうするんですか?」  僕はどうしても聞かずにはいられなかった。 「それはないよ。カメラだってやめたわけじゃないんだ。君の方が大事だから、無駄遣いをしないようにしてるだけだよ」  稔さんが僕を後ろから抱きしめると、僕の首元に唇を落とす。 「今までのどんな事より、玲くんに夢中だよ。僕の人生をかけてるんだからね」  稔さんが吸い付くように、首筋を軽く食む。それと同時に、稔さんの指先が僕の胸を撫でるように触れる。  思わず体が反応しそうになり、僕は慌て稔さんの手首を掴む。 「っーー稔さん、ここではダメですからね」  流されまいと、僕は理性を総動員する。こんな丸聞こえのところで、するなんて耐えられない。それなのに、稔さんの硬くなり始めたモノが僕の腰に当たる。  これはまずいと、僕は逃げるように湯船から上がる。 「‥‥‥玲くん」  切なげな声が聞こえてくる。僕は無視して体を拭くと、用意された浴衣を着ようと手に取る。  そこで僕は、帯を普通に縛れば良いのか、はたまた何かしらの流儀などあるのかと悩んでしまう。  旅館に泊まっても、浴衣を着ずに私服ですませてきてしまった。  そうこうしているうちに、稔さんも諦めたように、湯船から上がると浴衣に着替え始める。 「稔さん‥‥‥」  恥ずかしいけど、稔さんに小さく呼びかける。  稔さんは帯を締めつつ、僕に視線を向けた。 「縛ってください」  自分の帯を稔さんに向けて差し出す。恥ずかしさでやや、俯き気味になってしまう。  稔さんは目を見開くと、卑しい目に変わり僕を見つめた。 「い、いや、そういう意味じゃなくて‥‥‥帯を締めて欲しいってことです」  僕は慌てて、訂正する。 「別にいいんだよ。そういう志向も、大歓迎だからね」  僕の帯を受け取った稔さんは、悪戯っぽく笑う。  僕は恥ずかしくて、頬が茹でダコの様に真っ赤になってしまった。

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