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結合4
「さっき、校門のところにいた子が玲くん?」
「‥‥‥そうですけど」
時仲くんは視線を下に逸らし、微かに唇を噛み締めている。僕にバレたのがそんなに嫌なのだろうか。
「恋人なの?」
「違います。ただの友達です」
時仲くんは眉間に皺を寄せ、嫌悪の表情を浮かべる。
「そうなんだ。なら、僕が声かけても構わないね」
僕は笑みを浮かべ、問いかける。
「それは‥‥‥」
視線を彷徨わせ、明らかに動揺していた。
「あの子綺麗だよね。遠目から見ても、目を惹くから」
時仲くんが血の気の引いた顔で、僕を見つめる。
「玲に、手を出さないでください」
「どうして?」
「あいつは普通に女子が好きなんです」
僕には、苦し紛れの言い訳にしか聞こえない。
動揺を悟られまいと、淡々とした口調にしているようだけど、語尾が僅かに上ずっている。
「そんなの、分かんないじゃん。‥‥‥そっか、だから君は手を出せないってわけか」
「っ‥‥‥」
眉間に皺を寄せ、時仲くんが視線を逸らす。
「まぁいいや。ありがとう」
僕はそう言って踵を返す。
時仲くんをあんな顔にさせる玲くんに、ますます興味が湧いてしまう。
翌日、早速僕は時仲くんの教室に向かう。
他の後輩に用があると見せかけ、ドア越しにちらりと横目で様子を伺う。
一番後ろの席に時仲くんと玲くんの姿を見つけ、僕は興奮で心臓が跳ね上がる。
時仲くんは玲くんに夢中で、こちらに気づいていない。
何を話しているのか分からないが、玲くんは溢れるような笑顔を時仲くんに向けている。
間近で見ても綺麗な顔で、思わず見とれてしまう。
ツンと澄ました顔をしている時仲くんも、優しげな目を向けている。彼が玲くんに惚れてしまうのも頷ける。
ふと、時仲くんがこちらに気付き驚いた顔をする。
僕はそれに対して優しく微笑む。
それなのに、時仲くんは視線を逸らし、玲くんに二言三言声をかけると、僕とは反対方向のドアに玲くんを引きずるように連れて行ってしまう。
玲くんはびっくりしたような顔で、時仲くんに手を引かれていた。
前の扉から廊下に出た、二人の後ろ姿を見送りながら失笑する。
僕は玲くんを手に入れたいと、心の底から思ってしまった。
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