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結合8

「君も写真を撮る人間なら分かるでしょ? 美しい物を見た時にそれを写真に収めたい気持ちが」  僕は思わず恍惚とした表情になる。  まさに玲くんこそが、美しくも儚い存在だ。 「君も玲くんが好きなんでしょ? だからこそ、校庭に咲くあの白い花に例えたんだ」  時仲くんが驚いた顔で僕を見つめる。 「花言葉の『私だけを見て』。その由来は、綺麗な花を咲かせた後に赤い実が付くことで、長い間目を引くからだろ。玲くんはいつでも僕たちの目を引いて、逸らすことが出来ないからね」 「……調べたんですか」  時仲くんが、奥歯を噛みしめた。 「とにかく、玲に近づかないでください。もし、声をかけたりでもしたら……この事を玲にバラします。玲も盗撮されていると分かれば、先輩を確実に避けますから」  そう言い残し、時仲くんは先に屋上から立ち去っていく。  油断したことに後悔しつつも、僕は諦めることが出来なかった。  一つため息を零すと、焦る必要はないと自分に言い聞かせる。  その日以来、一見落ち着いたように時仲くんに感じさせるために、教室や図書館には立ち入らないように我慢する。  その間は部室の窓から帰宅する姿を目で追ったり、自宅のパソコンに溜め込んである写真を見て心を癒やす。  あっという間に卒業間近になり、僕は久しぶりに放課後の玲くんのいる教室へと向かう。  そこには玲くんが窓際でうたた寝していた。夕日の逆光を浴びて、影を落とす玲くんは神秘的に感じられる。  その様子を慈しむかのような目で、時仲くんが見つめている。  僕は教室のドアガラス越しから、その様子を静かに伺う。  ふいに、時仲くんが学生カバンからカメラを撮りだす。  僕は動悸が激しくなる。これはいつか使えるかもしれない。  自らもカメラを構え、震える手で玲くんにカメラを向ける時仲くんを撮影する。  人には盗撮だと言っておいて、自分はするのかと少し呆れてしまう。  今すぐ、入っていって証拠を突きつけることも出来た。  でも、今の自分では玲くん相応しくない。  出しゃばったところで、自分には振り向いてくれないだろう。  僕は高揚する気持ちを抱えたまま、この場を後にする。

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