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「…………………出す」
「はっ?いい、やだ、触るな!」
ずんずん近づいてくる狗神に腕を突き出すと、その腕を掴まれた。そのまま引き寄せられて、尻を掴まれる。
「水、冷たい」
「頭を冷やしたくて」
「力、抜け」
「はぁ?っいや、だ、やだ、」
長い指が昨夜も犯したそこに遠慮なく入ってくる。ぐちゅりと中をかき回すように動く指に、思わず狗神にしがみついた。
「やぁっ」
「っ、締めたら出せない」
「やだ、わかん、ない、って、ひぃ、あ」
「っ、美琴」
小さく名前を呼ばれて、狗神は空いた手で俺の顎をすくうと唇を塞いだ。
「ん、ん、」
浴室にいるせいか、シャワーから出る水の音も、唾液が絡まるキスの淫音も鼓膜に直接届いて、嫌でも体が反応してくる。
「ん、ふぁ」
「力、抜け」
「………っ無理、だって、そこ、やだ、へん」
やだ、と駄々っ子の様に漏らす俺の声音に、狗神が息をのんで俺の片足を持ち上げる。壁に体を預けられて、狗神を見上げた。
「っ、や、だ、………っ、ぁっ!」
塞がれる唇に、言葉をのまれる。衝撃が体を突き抜けて、目の前がチカチカと光った。
確かな質量をもって入り込んできた物体に、また揺さぶられて思考を根こそぎ奪われる。やだ、とぐずりながらしがみついた。
「っ、気持ち、い、の、や………ぅっ」
ずんずんと下から揺さぶられて、持ち上げられた片足からは完全に力が抜けていた。気持ちい、でも、嫌だ。どうしてこんなに気持ちいいんだ。俺はもしかしたらとんでもない変態なんだろうか。男に犯されて、こんなに気持ちがよくて?
もう三十路で独身で、こんな、こんな。
「ふぁ、あ………、ん」
唇を塞がれて、吐息も喘ぎも飲み込まれて、苦しくて涙があふれてくる。
「気持ちい、やろっ?」
「や、だ、きもちい」
ぐちぐちと響く音も全部、全部今は快感につながって仕方がない。
「あぁ、も、怖、い」
気持ちよくて、よすぎて、とてもじゃないけど怖くてたまらない。それよりも、狗神は大きくて、存在感がありすぎて形までくっきりわかってしまいそうで、恥ずかしいし、気持ちがいいし、でもこの快感が怖い。
「ぬい、て、も、こわっ、ああ、っひ、やぁ」
「俺をここまで煽ったのは美琴だっ、」
がつんとより深く穿たれて、激しくなる律動に奥に広がる熱を感じて意識が途切れた。
◆
目が覚めたら、今度は体がさっぱりしていた。ベッドに寝ていた体を起こして、あたりを見回すと、部屋もなんだかきれいになっている。
「………狗神?」
さらに枯れた声にため息をはいて、ベッドを降りた。ふらつきながらリビングに向かうと、狗神がソファに座っているのが見えて、はっと息をのむ。
「ああ、起きたか」
「……………それ、俺の携帯…?」
狗神の隣に座り、手に握られて携帯を指さした。狗神はあぁと答えると
「会社?から連絡が入ったから、今日、美琴は休みって答えたけど…歩けんやろ?ふらふらやし」
誰のせいだと思ってるんだ。誰の。
「確かに、仕事にはならないだろうけどって、違う。お前、これからどうすんの」
「どうって?」
「家、あるんだろ?家族がいないって言ったって、一度帰った方が」
「帰る家なんてない」
真っすぐ見てくる狗神の視線に返し、俺はその言葉に息をのんだ。なら、これからどうすれば。
「………………どうするの、さ。これから、俺だって、いつまでもお前を置いとく訳には」
いかないだろう。と言い終えてから、気まずくて目をそらした。だって、またあんなことになったら、一度快楽を覚えてしまった体はたぶん、また求めてしまう。あんな、好きじゃないのに、そんな相手に求めるのは、なんて愚かなんだと。
「美琴のところにいる。ここは居心地がいい」
「っ、いや、だって、狭いだろ?」
「美琴がいればいい」
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