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第11話

 連絡先を交換し、あの後家まで送ってくれた先輩は俺が家の中に入るまでずっと玄関外で立っていた。俺の家はボロアパートだからあまり見られたくなかったが、先輩はいつも通りの優しい顔でまたねと手を振る。振り返そうとはしたのだが、どこか照れくさくて先輩を見るだけ見て玄関の戸を閉めた。あー、素直になれない。  貰った服をハンガーにかけ、皺がつかないように細心の注意を払う。この服だけで多分、半年ぐらい暮らせる。泥棒に入られない家って思ってたけど、これ狙われないかな。  ベッドに寝転び、携帯の画面に映る先輩の名前を読む。“高良 京”、俺の3個目の連絡先。祖父母の連絡先は既に消されているが、1つ目は施設。2つ目は病院の先生。施設の人が“困った時は連絡してね”と言っていたが、結局1度もかけてない。まぁ、先輩にも困った時に連絡しよう。  ピコンと音がなり、携帯が赤く点滅する。見てみると、先輩の名前。  ──明日、楽しみだね。  先輩は、今困ってるのだろうかと、なんて返せばいいのか悩む。大丈夫ですか?それとも、体調悪いですか?でも、明日、楽しみだねという言葉に繋がらなくて、先輩からのメール画面を見つめながら唸る。  するとまた、先輩からメールが届く。  ──あの服来てこないとお仕置き。  「お仕置き・・・・・・」  従兄弟の兄さんも同じこと言っていたことを思い出し、背中の火傷が痛んだ。もう治ってるはずなのに、ヒリヒリする。  「あんまり痛くしないでくださいっと」  早速困ったことが起きようとしているからメールを送った。痛いのは嫌いだし、熱いのも冷たいものもあまり好きじゃない。でも、先輩は嫌いじゃない。  ──誘ってる?  また来たメールに「誘ってません」と返し、携帯を近くに放った。なぜか、メールを打つだけなのに心臓が痛い。大体、痛いお仕置きを自分から誘うわけないだろ、肝心なところで鈍いんだから。  なんだかどっと疲れが押し寄せてきて、眠たくなる。アラームを設定し、服を脱ぎ、代わりに布団を羽織ると、そういえばどこに行くかとか、何時に行くかとか聞いていなかったことに気づく。  重くなる瞼にまぁいっかと告げ、そのまま眠りに落ちた。

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