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第12話

 鳴り響くアラーム音に目が覚め、ゆっくり腕を振り落として止める。前に目覚まし時計を投げて窓を割ったことがあるから、それ以来慎重に止めているが、このアパートがボロいのが悪い。まだ6時かと、安心して二度寝したのがいけなかった。次に目を覚ましたのは何度も鳴る玄関のチャイムで、それから目を覚ませば目の前には先輩がいる。  「せんぱ......?ふほーしんにゅ......」  「寝ぼけてる?てかなんで裸?ちゃんと服着て寝てね」  包んでいた布団を剥がされ、しばらくベッドの上に寝転がっていたが、次第に頭が覚めていく。先輩の前で全裸になっていることに気づき、ダラダラと冷や汗をかいていた。  「ひゃう」  ポイポイッと服を投げられ、服を着せられる。先輩の手が当たって時々変な声が漏れるが、急いでいるのかそんな俺を軽く叩いて急かす。ペチッと音が鳴り、パンツまで履かされた時は羞恥心で限界だった。昨日の俺、なんで全部脱いだんだ。いや、毎日脱いで寝てるんだけどさ。  朝ご飯も食べれず、昨日の服に着替えさせられた俺はまた先輩に抱き抱えられる。  「や、やめろ、おろせ」  足をドタバタさせると、お尻を叩かれる。結構痛くて、一瞬で俺は大人しくなった。  「お仕置きね。みんな待ってるから我慢して」  その声に今日はみんなでかけるのだということを思い出す。もしかして俺のせいで遅刻してる?寝すぎたのか。  それから今気づいたけど、先輩の私服は流石というか、無茶苦茶かっこいい。ネイビーのデニムパンツがスラリと長い足を引き立たせていて、シンプルだけどすごく似合っている。モデルの名は伊達じゃない。  「先輩、かっこいいな」  いつもなら絶対言わない言葉だが、寝起きだからか、遅れたことへの罪悪感か、素直な感想を言うことが出来た。  「ふふ、ありがと」  「叩いてごめんね」と、お尻を撫でられるが、全然嬉しくない。セクハラする上司か。でも、言った後はやっぱり小っ恥ずかしくて、2度というものかと先輩の背中をポカポカと叩いた。今度は抓られて大人しくなった。  「鍵ってどこにある?あー、あった」  鍵置き場から同じ鍵を2個見つけたかと思えば、1つを自分のポケットにしまう。流石にそれはカチンときて、勝手に取るなと言おうとしたが、ドタバタしてたせいでいえなかった。  家を出た後、担がれたまま集合場所に向かう。先輩って誰かを抱えたりするのが好きなのか、それとも俺が恋人だからなのか。だからといって、恋人にこんなことをするのか......。  考えれば考えるほどぐるぐるしていく思考回路に目眩を感じながら、2日ほどで抱えられることに慣れてしまった自分にも頭が痛くなった。

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