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第40話

 「灰人は、俺に何も言わないけど知りたいこととかないの」  1番聞きたいのはやっぱり、京が俺をどうするつもりなのか、噂は本当なのか。でも、それは俺が聞いたらダメな気がする。もし3ヶ月後に別れるよって目の前で言われたら、酷い暴言を吐いてしまいそうで。  「好きな食べ物とか、知りたい」  「え? そんなこと?」  えっと、と考えるように顎に手を当てる。  「俺はなんでも好きだけど、強いて言うなら自分で作ったものが好き」  「はぁ?」  自分の手料理が好きって、なんだこいつと、白けた目で見ていると、俺の視線に気づいたのか違う違うと手を振っている。何も違わないだろ。  「俺、潔癖っていうか、人の触ったもんあんまり好きじゃなくてさ。食べれないことはけど、あんまり食べたくはないっていうか......」  「俺に作れって言った」  「あれはまた別なの。大事な人なら俺が作ったことと一緒」  「一緒か......?」  俺には理解不能の領域だ。  「潔癖の人って、その、俺とキスとか」  「大丈夫なのかって?大丈夫」  「......」  とりあえず、自分が作った料理が好きだということは分かった。俺に理解力がないのではなく、京だけがおかしいのではと思うのは俺だけじゃないはずだ。とりあえず、全く分からないから聞かなかったことにしよう。  「じゃあ、俺も聞いていい?」  「どうぞ」  「なんで、俺と付き合ったの?」  それを京が聞くのか。  「好きでいてくれるって言ったから」  「じゃあ、それを言ったのが俺じゃなくても付き合ってた?」  どうなんだろう。考えたこともなかった。  「最初は誰でもよかった、かもしれないけど、それは先輩も同じだろ?」  「それはどうかなぁ」  とぼけた顔で背伸びをする京はやっぱり何を考えているのか分からなくて、得体の知れないものがもやもやと心に残る。  「じゃあ、まだ俺のこと好きじゃない?」  「......」  まだ、好きじゃない。絶対、好きじゃない。  「好きじゃ、ない」  「やっぱり生意気だなぁ、ま、そんな所も可愛いと思うし好きなんだけど」  好きって、俺はこの返事をしなきゃ好かれないのに?  帰ろうかと差し出された手を素直に握れなかった。本当はもう分かっているのに、3ヶ月を楽しめばいいのに。気づいた気持ちに蓋をしたいと、自分を守ろうとしては誰かを傷つけてしまうのだ。

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