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第42話
「ん」
ごそっと、頭が動き、ベッドの中で寝ていたそいつが頭をあげる。
「あれぇ?」
クルクルとした髪の毛をがしがしとかき、とろんとした目でこちらを見て、それから京を見る。
「高良京......?夢......?」
ぼんやりとした目付きで二度寝をし始めるそいつの布団を引ったくり、無理やり体を起こす。いい加減起きて、元気になって出ていけ。
目を開けたそいつは、中性的な顔立ちをしていた。正直女か、男かすら分からない。ただ、少しだけ目元が誰かに似ている気がする。
「暑い......」
パタパタと手で顔に風を送り、汗をかいていたので冷房をつけると、赤い顔が少しだけマシになった気がした。
それから、京の方をずっと見ている。俺なんか視界にすら入っていないのか、チラリとも見ない。
「触れるよ、本物だ......!」
何度か京の腕を触った後、握手してくださいと、手を差し出したそいつの手を叩き、間に割り込む。京といると、彼がモデルの仕事をしているということを忘れそうになる。この人は、かっこよくてみんなの王子様のような存在なのだということを。
「もしかして佐倉灰人さんですか?」
「え、うん」
「あ、僕、夢見 洋 っていいます」
夢見、俺の従兄弟と同じ名前だ。
「あなたの弟です。兄さん」
そう言って微笑んだその男は、不気味なほどにあの男の顔と重なって見えた。俺の背中の火傷跡を作った10歳上の夢見 弘 という男に。
「まって、灰人に弟がいるなんて聞いてないよ。それに、灰人は小さい時に御両親を......あ」
なにかに気づいたかのように口を手で抑えているがもう遅い。その先の言葉を言わなくても、先輩が知っていることを察してしまった。
「ごめん、唯ちゃんからちょっとだけ聞いて。勝手にごめんね」
「いいよ、別に。隠してたわけじゃないし」
できるならもちろん知られたくなかったけど、唯ちゃん先生から聞いたのなら、彼は良かれと思って言ったんだろう。俺のことを心配してくれていたし、どんな言葉で誰が傷つかなんて、事情を知らなきゃわかるわけないんだから。
「あと、洋は俺の弟じゃなくて、昔一緒に住んでた従兄弟の弟。兄さんなんて言ってるけど、俺たち同い年だから。1ヶ月位生まれた時期が違うだけで」
それなのに体は細いが筋肉はしっかりついているし、身長も最後に会った日からかなり伸びている。顔だって随分と大人びていて、全然わからなかった。小学校3年生の頃、施設に入る前に少しだけ会って、それから1度も会っていなかった。
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