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兄弟どっちも久々本番!?遠足の後は校内階段H!-2
「「「ぎゃっっ」」」
「ヒぃ……? あ、あれ、トモ……」
智章がボールを追ってやってきた。
片手でボールを拾い上げ、片手で涙目の星哉をぐいっと引っ張り上げた。
兄はそのまま下級生の輪から弟を拉致、ボールをバスケ部仲間に向かって投げて「ちょっと弟鍛え直してくるわ」と声をかけた。
きょとんとする星哉を引き摺って行く智章の背中に下級生らは顔を見合わせる。
「やべ。いじめてるって思われた?」
「トモ、どこ行くの?」
「キノコ狩り」
「キノコ狩り?」
「お前は毒見係」
「え。やだっ」
正午過ぎ、生徒達の大半が仲のいいグループ毎に昼食をとっている傍ら、智章は星哉の手首を掴んで芝生広場を堂々と突き進んでいく。
「トモ先輩だ」
「かっこいい」
そんな声がちらほら聞こえてきて、弟の星哉は、誇らしいようなイラッとするような。
「トモ……痛い」
「エビフライうまかったなー」
「……エビフライ、おれの、入ってなかった」
弁当格差にガーンしかけている星哉を肩越しに顧みて智章は笑った。
「俺のにも入ってないし」
「っ……なんだよ!」
「なんだよー」
「てかさ。どこ行くの。キノコ、もう見飽きたんだけど」
「じゃあ俺のキノコちゃん見て」
真っ青な空の下、清々しい空気の中で平然と下ネタをぶっ放した智章に星哉はまっかになった。
「ば……ばーか」
「いや。本気だし」
そう。智章は本気だった。
人気のない場所を見つけて星哉に自分のキノコちゃんであれこれするつもりだった。
「お前さ、友達だからって、なめられスギ」
辺りをきょろきょろしながら森林ゾーンへ踏み込んだ智章の後頭部を星哉はじーーーっと見つめて、言った。
「あれー。まさか。トモ、やきもち?」
半笑いの表情で冗談のつもりでそんなことを言った弟に兄は。
ぎゅううぅううぅううぅッッ
「ッ、ッ、痛ぃぃッ、手首千切れるッ」
「千切ってやる、ばーか」
しかしながらなかなか人気のない場所が見つからない。
広大な面積とはいえ、全校生徒が散らばっているわけだし、一般客もいるし、管理している職員もいる。
やっと見つけたかと思えば……先客がいたり。
「あんっ」
「わわわ、トモぉ、やばいって……」
「あれ、隣のクラスの……誰だったかなー」
「トモってばッッ」
木立の奥で過激にいちゃつくカップルを大木越しに繁々と眺める兄を必死こいて引き剥がそうとする、まっかっかな弟。
「てかさ。むりだって。今のトモみたいに、誰かに見られたら。おれ、死ぬ」
「ま。確かに。だな」
やきもちで逆上せていた智章の頭は森林公園をあちこち歩き回っている内に大分落ち着きを取り戻しつつあった。
「時間なくなっちゃうよ。吊り橋行きたかったのに。もう戻りたい、おれ」
バスケ部所属の智章より明らかに体力が劣る星哉はあちこち連れ回されてヘトヘトになっていた。
「聞いてる、トモ? おいっ」
「聞いてる聞いてる。じゃあさ、学校でしよ」
「……」
「家、かーさんいるし。夜まで待てない」
「あの……嫌です」
「お前んとこ、教室解散? 俺は校庭で解散なんだけど」
「あ、えーと、教室に集まんないと……てかさ、学校でとか、嫌です」
「今日、部活ないから。終わったら東館三階の階段踊り場、な」
「ト~~モ~~」
そんなこんなで楽しい遠足は終わりを迎えた。
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