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「嘉月君、これよろしくね」 当社のエントリーが確定している他県の庁舎システム開発コンペに必要な提案書作成を嘉月にお願いしに係長がやってきた。 そう、ここは正社員が固まるフロアとは別フロアにある多目的ルーム。 若手社員に向けた講習会で使用される以外は備品置き場かつバイトの作業場となっている。 そこにお守りとして使わされているのがこの俺なんです。 「ご当地っぽいイラスト、この辺にいれてくれるかな、で、配色はこんな感じ、あと原稿内容の推敲もよろしくね」 「はい」 係長はうんうん一人で頷いて部屋を出て行った。 「ちっ」 うわ、怖いです、このコの舌打ち未だに慣れません。 「ご当地っぽいイラストですかー、こんなど地方の情報知りませーん、調べるのめんどくさ、にしてもこのダサ配色、メリハリなくて内容浮かばれねー、ハイ、流し読み決定」 怖い、この独り言、怖い。 にしても、俺、この嘉月とえっちしちゃったのか。 『こっちも、こっちも抓って』 乳首の感度、すごくよかったよな、そういえば指までしゃぶられたよな。 バックで……けっこーがっつりシちゃったよな。 『ふぎぃぃ…………っ!!』 あの嘉月があーんな情けない悲鳴あげるなんて、あ、やばい。 思い出し過ぎたら勃ちそうだ。 「ご当地ゆるキャラでものっけてやろーかな」 ……俺、しっかりしろ、相手は嘉月だぞ。 完全俺のこと上から下までナメてる未成年だぞ。 ここは週末の合コンで素敵な相手を見つけて軌道修正しなければ。 あ、場所どこだったっけ、時間何時だっけ、LINE確認しよう、よし、金曜日は俺だけ特別ノー残業デーにしよう。 「眞部さん」 ぎくりとしてスマホから顔を上げれば嘉月がデスクに手を突いて覗き込むようにこちらを窺っていた。 「稼動と稼働って、どっちが正しいんでしたっけ」 黒白ボーダーのVネックシャツを着た嘉月、なぜか半笑い。 ……絶対に合コンお誘いトーク見られた。

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