10 / 34
3-2
翌朝、出社後、いつものように嘉月の作業場として宛がわれている多目的ルームに行き、パソコンの再セットアップを五台同時に淡々と行っている嘉月の後ろで官公庁に依頼されている地積情報管理システムの入力をポチポチしていたら。
「失礼しまーす」
かつて俺が片思いしていた派遣のGさんがやってきた。
セットアップディスクの入れ替えをしている嘉月の元へ近寄ると、なんと、プレゼントを。
す、すごいです、第三者がいる俺の前で渡すなんて自信に漲っているというか。
「スミマセン、気、遣わせて」
嘉月の言葉にふるふる首を左右に振って、またご飯でも、とぬかりなく念押しアプローチ、そうしてGさんは去っていった。
すると嘉月は。
ビリビリビリィッ
ああっ、そんな雑に包装破かなくたっていいじゃないか、店員さんがギフト用に丁寧に包んでくれたっていうのに。
「なんじゃこりゃ」
人から頂いたプレゼントに松田優作はないだろう、嘉月。
ボスッ!
「うわ、ちょ、嘉月く、ゴミ箱はないって!」
中身を確認するなり、ビリビリ包装が引っ掛かったプレゼントをゴミ箱に躊躇なく突っ込んだ嘉月に俺はぎょっとした。
「だってださいし、いらないし。あ、眞部さん、いります?」
嘉月の無神経ぶりに呆れていたら次は係長がやってきた。
「明日ね、ここ講習会で使うから、嘉月君、お休みね」
「ハイ」
「それで、眞部君、この辺のもの、嘉月君と片づけといてくれる? 五階にね」
「あ、わかりました」
この辺のもの、とは、複数の段ボールに詰まった用途不明なA4書類の束、束、束、あとA3サイズもある、これは殺傷能力が高めな凶器に等しい、うん、台車が必要だ。
係長が去った後に「めんどくさ」とぼやく嘉月と、俺は、片づけを始めた。
「眞部さん、シましょーよ」
「ば……っ、ここ、会社っ!!」
「だから?」
「それに……っまだ午前中! 始まったばっか!」
ともだちにシェアしよう!