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自社ビルの最上階であるこの五階フロアは倉庫代わりに使われていた。
観音開きの扉の向こうは埃っぽい、薄暗い、もの寂しい空間だった。
「だから?」
閉じられたブラインドの隙間から朝陽が滲む、結構広い、ひんやり冷たい室内。
「コーフンしません?」
茶髪で、色白で、バイな、バイト君の嘉月。
大柄チェックのネルシャツにオフホワイトのチノパン、迷彩柄のドライビングシューズ、このコ美容師さんですか。
「む……むりだって」
段ボールを積んだ台車を傍らにぐいぐい迫ってくる嘉月を制して、俺は、お断りした。
「っち、使えねー」
「……使えるもん、ちゃんと使い物になってるもん」
「っち、これだからビビリは」
エロゲスな笑みを浮かべた嘉月はいきなり俺のネクタイを掴むと問答なしにぐいっと自分の方へ引き寄せた。
「わ……っ……っ……!」
午前中の職場、下のフロアでみんながせっせと働いている中、バイト君とキスをした。
舌打ちが得意で人を貶すことに慣れきった唇は、けっこう、案外、柔らかい。
しっとりしていて、ほんのり微熱があって、うっすら天然ピンクに色づいていて。
ちょっとかさついた俺の唇を癒してくれるような。
つい童貞みたいにぎゅっと目を閉じていたら、ぬるり、口内にはいってきた舌先。
強張っていた俺の舌をからかうみたいに、ちょっかいを出してきた。
たどたどしく応じてやれば、ぬるぬる、ぬるぬる、しつこく纏わりついてきた。
「ぅ……ン……」
零れ落ちた嘉月の色っぽい声に俺はぞくぞくした。
恐る恐る薄目を開けてみれば半開きの双眸でいた嘉月と目が合った。
クチュクチュと舌に舌を絡ませながら、さらに俺に擦り寄って、俺の頭をぐっと抱き寄せて。
「ン……ン……ン」
あ、やばい。
嘉月、かわいい、Gさんなんか目じゃない。
自制心も忘れて、俺も、嘉月を抱き寄せた。
重なり合った服がカサカサ衣擦れの音を立てる。
俺達以外誰もいない広い室内で、カサカサ、カサカサ、カサカサカサカサ。
俺と嘉月、両方の口元に唾液がたらたら落ちていった。
服越しだと物足りなくて、ネルシャツとインナーのなかに片手を滑り込ませ、背中を撫でてみた。
あたたかい。
部屋が寒いからなおさら温もりが掌に沁みる。
俺はそのまま肌伝いに正面へ掌を移動させて、嘉月の乳首を、ぷにゅっとつねってみた。
「あ……ッ」
思わずキスを中断して悲鳴を零した嘉月、もっとぷにゅぷにゅつねって、こしゅこしゅ擦ってみたら、よだれだらけの唇がひくひく震えた。
「ぁっ、やっ、眞部さっ、ゃっ」
半開きの双眸がじわりと濡れた。
湿った睫毛が、とても、えろい。
「あ~~っだ、めっ……立てなぃ……ッ」
脱力しそうになった嘉月を慌てて支え、俺は、壁際にあったデスクにバイト君を座らせた。
すかさず両足の間に割って入って、べろんと服を捲り上げて。
指攻めにぷっくん腫れていた乳首に迷わず吸いついた。
「あっ、やらっ、あっ、あっ、乳首やらぁっ」
「ッ、ほんっと……弱いよね、乳首」
「ぅっ、ぅっ、眞部、さぁん」
「……や、やっぱり、シようか、嘉月」
かわいい嘉月にすでに股間がハイテンションです。
ちょっとやそっとじゃ、もう収まりがつかないテンションの高さです、コレ。
「この、ビビリッ……急げよ、グズッ」
こんな時でも俺を罵ることを忘れない嘉月、さすがです。
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