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7-1
「映画面白かったなー」
「途中寝てた」
「予告で流れたアクション映画も面白そうじゃなかった?」
「忘れた」
「晩飯どうしようか、俺、定食がっつり行きたい」
「パスタ」
週末、いつも以上に混んでいる駅ビル上階のグルメフロア。
嘉月の欲求通りイタリアンレストランに入った俺、いーんです、これでいーんです、だってこのコ男だけど女王様気質だから。
「映画の半券でドリンクもらえるって」
「うそっ、あれっ、どこやったっけ!」
「ワイングラスの白にしよ、スミマセーン」
「俺まだ何一つ決めてないっ」
恐るべきマイペースっぷり、注文済ませばスマホとにらめっこ、空気扱い放置プレイはお手の物。
でもいーんです、最近そういうのも心地よく思えてきたから、全然いーんです!
ファッションフロアに並ぶショップの店員さんらにも引けをとらない、フードのついたマウンテンパーカーにストライプ柄のアンクルパンツ、ツートーンのデッキシューズ、春のオススメアイテムを上手にフル活用している二十歳のバイのバイト君。
さすがに職場ではかけない伊達眼鏡がすごく似合ってます。
ふつーにかわいいです、あ、違うか、ふつー以上にかわいいです。
一応、俺の恋人です。
「眞部さんのソレなに」
「俺のはラグーソースの牛すじ、」
「半分ちょーだい」
あ、お肉ほとんどなくなっちゃった、とほほ。
「ちょっと本屋寄ってもいい?」
「今時紙ベースですか、最先端の情報システム構築をモットーに掲げる会社の一員がアナログ嗜好ですか」
「うぐぐ……俺はページを捲るときのドキドキ感が好きなの!」
「どーせマンガですよね」
ち、巷で話題の最新刊だもん!
「座って待ってますから。ダッシュで買ってこい」
焼きそばパン買ってこい的な調子で言われて、さすがにカチンときた俺、ダッシュじゃなく小走りで本屋へ向かってやった。
そして再び小走りで戻ってみれば。
フロアのいろんなところに設置されたソファに座って待っていた嘉月、改めて遠目から見るとあらまぁなんてイケメンなんでしょう……じゃなくて。
「嘉月君、昔と変わってないみたいだね」
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