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「お、お前って奴は……っい、いつの話だっ、元彼って俺より一人前!? それともまだ他にいるのかっ!?」
「あんっ、眞部さんって、想像以上の、ゲス犬っっ……セックス中に人の恋愛履歴糾弾するとか……っっゲスすぎんだろ……!」
「だ、だって……!気になるもん!」
「あっあっ……あんっ……」
「嘉月……っイケメンだし、男の俺から見てもかわいーってなるときあるし!? あの人かっこよくて……っお洒落で……っ……アウトレットばっか漁ってる俺なんかやっぱり不釣り合いかもって、ッ、いでででで!!」
毟られるんじゃないかっていうくらい髪を引っ掴まれて俺は目を剥いた。
真下にいた嘉月は、そんな凶暴な仕草に反して……まっこと板についたエロゲスな笑みを浮かべていた。
「やっぱり……眞部さんって……眞部さん……」
「なにそれ……どーいう意味ですか、今、俺のこと最高にバカにしてますか」
「してる」
……きぃぃぃぃ!!
「終わった過去のことだし。集中してくんないと帰る」
「や、やだ、帰っちゃやだ」
「ヤなら集中しろ」
芦原さんも嘉月のエロゲスな顔をいっぱい見たんだろうか。
ピローン♪
「……嘉月、仕事中はせめてマナーモードに」
会社の自社ビルの多目的ルーム、バイト君の仕事場になっているココで世話役の俺もパソコンを持ち込んで二人きりで仕事しているのだが。
「芦原さんから」
またかよ。
この間の週末に久々に再会してからというもの頻繁にメールしてきやがって、どういうつもりだよ、しかも現在朝の十時だぞ、心から働けよ!
「……な、なんてメール?」
どうしよう、心から働けない会社員が約一名ここにいます。
「会いたいって」
直球だなおい!!!!
「あれ? 芦原さんには俺がどう見えたのかな? 今現在お付き合いしている恋人には見えなかったのかな? ふしぎだなー?」
後ろのシステムデスクに頬杖を突いてムカムカしていたら、ずらりと並ぶスタックテーブルのほぼ中央に着席してスマホを覗き込んでいた嘉月にチラリと見られた。
「眞部さんには関心なかったでしょーね」
「ガーーン」
「俺に至っては昔通りのゲス未成年に見えたみたいですけど」
「……」
「テキトーな遊び相手。お互い約束に縛られない、お手軽便利な」
「お手軽便利って……真剣に付き合ってたんじゃないの?」
回転イスをキィ、と音立たせて嘉月は体ごと俺の方を向いた。
「不倫で真剣に付き合うって? イミあります?」
爽やか白シャツにネイビーのニット、ベージュのチノパンにスリッポンを履いたバイト君の質問に答えられない正社員の俺。
「眞部さん、ぴゅあっぴゅあ」
「ッ……フンだ!」
「でも。さすがにアレなんで。今度ちゃんと会ってお断りしよーと思います」
「会って? メールでよくない?」
「こーいうことは直接会って話したいので」
「へぇ」
「いっしょに来ます?」
「行く」
即答すれば笑って、なんだかんだ言って逐一俺に報告してくれていた嘉月は正面を向き、資料の突合作業を再開させた。
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