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一本の電話

 翌朝になり、俺が朝食のベーコンエッグトースト用のベーコンエッグを焼いていると、玄関のドアが開き、 「おはよ」  久我が、扉のふちに寄りかかるように立っていた。ドアを確認できるように置いた鏡を横目でいると、久我と俺は目が合った。 「おはよう。飯食ってくか」  俺は手を止めずに会話をした。いつも通りの朝だ。 「あったりめぇよ。その為に来たんだからよ」  そう言いながら俺に近づき、俺の腰に手を回した。 「っ、やめろ」  嫌がり久我の腕を離そうと掴むが全く離れない。普段から鍛えている筋肉が付いた腕は、中途半端な筋力の俺には無理だった。 「実はさっき言った事嘘、本当は葉月に会いに来た」 「…危ねぇだろ、火使ってんだぞ」 「無視すんなよ」  久我は俺のアゴを持ち、目を閉じて、久我の唇が徐々に近づくる。何もできない俺は、目を開き久我の唇を見ることしかできなかった。 「「うわっ」」  久我のスマホが鳴った。 「はぁぁ」  大きな溜め息をつき、不満を呟きながら、ズボンのポケットに入れていたスマホを取り出す。思いっきり動揺した俺は、火を消し持っていた菜箸を置き、大きく深呼吸をした。 「はいぃ、もしもし」  少し怒りながら、話している。  電話相手がうるさかったのか、耳元からスマホを離していた。溢れて聞こえたのは、「切れてる場合じゃねぇよ!」だった。電話は案外すぐに終わった。 「誰?」  俺は久我に問うと。 「雪坂、米軍が来てんだとよ」  久我は急いで、準備をしに一つ上の階の自室に走って行った。  雪坂とは、俺らの所属チームの主任、雪坂 修吾の事だ。久我は何故か、上司である雪坂さんのことを呼び捨てである。  俺も事情を察し、すぐに支度をした。二分もしないうちに久我が帰って来た。 「米軍が来るのは、三日後って聞いたが」  二人で廊下を走りながら、俺は聞いた。 「俺もよく分かんね。あっち着いてから、雪坂に聞こう」 「ああ」  急いで電車に乗り、十数分電車に揺られ、基地に着いた。 「雪坂!、どういう事だ!。こんなこと、聞いてねぇぞ」  怒りながら、持っていたリュックをラノに投げ渡した。 「こっちだって知らねぇよ!。さっき、報告があったんだよ!」 「喧嘩してねぇで、雪坂さん指示を」  俺は間に入って喧嘩を止めた。犬猿の仲である二人の鳥役は本当に大変だ。  雪坂さんからの指示を聞き、集まった隊員に久我が説明し、皆が戦闘着に着替えている時。わざわざ部屋が違う俺のところまで久我はやってきた。 「葉月っ」 「ああ?」  久我は、右手拳を俺の前に突き出した。そして、互いの拳を合わせた。軍員になって初めての頃、久我が何かのアニメで見たことを真似しするために始まったこの拳合わせ。正直周りの目を気にせず拳を突き出すものだから、恥ずかしくて嫌だ。初めの頃は見る者全員に説明をするのが大変かつ恥ずかしかったが、今は皆も慣れ、「いつものやつか」程度になっているだろう。 「この戦争で勝って、生きて。そんで、葉月を抱く」 「っ、勝手にしろ」  部屋を出ようとすると。 「葉月」 俺が振り向くと。 「愛してる」 「バカじゃねぇか」  ドアを開け、部屋を出た。ふと廊下にある鏡を見ると、俺の顔は耳まで赤かった。

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