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ちょっと来て
それからみんなで世川につづいて教室を後にした。優斗はやはり新しい友達と行くらしい。
奏は早々に女子に捕まって行ってしまった。
1人で行くのも何か嫌だし、帰ろうかと思っていたら
「千聖!1人?一緒に行かない?
友達に置いてかれちゃって」
「え?あ、おれ、も。」
「ふふ、行きましょう?」
「え、あ、うん。」
そこで明とさっきまで話していた子達がそそくさと逃げるように出ていったのが見えた。
きっと明なりに気を使ってくれたのだろう
けど女子に助けられる男って……どーよ。
それから、近くのカラオケに行くことが決まったらしく、クラスメイトの後ろらへんを明と歩いていた
最初は女子と2人っていうのに緊張したけど
親睦会らしく何となく男女バラけていてすぐにその心配は無くなった
「千聖って兄弟いなさそう」
それはよく言われる。
何か自由だし、人慣れしてないし、でそう見えるらしい。
「よく言われる。でも妹が一人いる」
「へぇ?お兄ちゃんなんだね?」
「うん。らしくないけどね。明は?」
「兄さんが1人」
「へぇ。意外長女だと思ったけど」
「でも双子だし、年変わんないし?」
「ふ、双子!?凄い。」
「え、何がよ、あ!あれよ!兄さん」
「え、同じクラスなの!?」
明が指さしたのはスラッと、痩せ型の気だるそうな男子だった。明はスッとした顔立ちなのに対してその男子は柔らかい印象を受ける
「…………。似てないね?」
「二卵生なのよねぇ」
「へぇ。」
「ねぇ、恋人いた事ある?」
え、…………
「あ、それ、は、」
「ちょっとよか?」
急に声をかけられて前を向くと目の前に
奏がいた
まだ、怒ってる
「え、あれ?か、奏?」
「ちょっと来て」
「は?え?ちょ、ちょっと、ま、待って」
奏は俺の左手を掴んで皆が進むのとは逆方向に進み出した。明は何が何だか分からないって顔でそれを見ていた
「おぃ!!奏!!何すんだ」
「よかけん」
「良くねーし!!」
「うるさかね、」
「なっ!!!」
俺は今までバスケで鍛えてきたので簡単に振り払えると思ったけど、案外奏は強くてビクともしなかった。
てか!どこ行ってんだー!!
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