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告白

次目を覚ました時、奏はいなかった。 月明かりではなく、強めの日光がカーテンを突き抜けて刺しているから、もう昼に近いのだろう。奏は学校に行ったのか?……だとしたらなんて奴なんだ。けどどこかで奏はそんなことしないって思ってる。 今は開けっ放しのドアを見ながらそう思える。 何となく不思議な感じだ。 ズキっ 相変わらず身体中を痛みが走る。寝返りも困難で何も出来ない。…………俺、今なら階段とかを一生懸命登ったり、降りたりしてるお年寄りの気持ちが誰よりも分かるかもしれない。己の動かない手足とお戦いになられるその姿。次からあわよくば、抱えて差し上げたい。 「ふっ、千聖。また百面相?」 バッと視線を動かすと奏が立っていた。 「ぁ!ぅぅっ」 「無理に話さん方がよかよ。喉いたかろ?」 ……だ、か、ら。だれのせいで! でも、今回はこの前より酷く声は一言も出なかった。初めての経験で少し不安になる。 奏はいったん戻って水を持ってきた あの日のように、俺に水を飲ませた。起こされた時はあの日よりも痛かったが、奏はあの日よりも優しくて、何か泣きそうになった。 水を欲しているのに、喉が痛くて、なかなか飲み込めない。それでも奏はゆっくりゆっくり飲ませてくれた。あんなに酷く抱かれたのにこんなにも優しい奏に戸惑ってしまう、 「…………コクっ、…………ん、」 「ん。もうよか?」 こくん。と頷くとよしよしと頭を撫でてくれる サイドテーブルに水を置いた奏は俺を支えながら隣に座って話し始めた。 「……千聖。ほんまごめんな。俺自分でも自分がよう分からん。こげんかこつばしてゆるされるちおもてなかけど、……ごめんな。自分だけ言わんとかせこかけん、ひとつ千聖に言うわ。」 奏が、心底辛そうに口を開く。 「………………俺、…………好きとか、愛しとるとか、怖いっちゃん。嘘やんって思ってしまう。やけん、自分も好きとか愛しとるとか言いたない。嘘やった時キツかけん。」 びっくりした。飄々としている奏がそんな事を思っていたなんて。ふと奏が彼女なんていた事ないと言ったことを思い出した。だからなのかな?でも、何でそんな事を俺に? 「けど、何か千聖見よったら、最初は可愛かち思いよったけどだんだん愛しいって思うようになって、でも、俺は本当の心を手に入れる方法なんて知らんけん。こんな事してしもて、」 …………ん? ……ん?………………ん?………………ん? 「…………俺、千聖が好きや。」 奏は下に向けていた視線をゆっくり俺を向けた 切なそうに悔しそうに笑っているような顔は何となく奏が苦しんでいるように見える。 何か言わなきゃ、咄嗟にそう思った。 「……あ、がな……んん、ゴホッ」 けど、声は思うように出なくて 「千聖?何か言いたいん?」 頷くと奏が紙とペンを持ってきてくれて、また俺を支えてくれる。何か力入れると痛いからひょろひょろの字になっちゃうけど、しょうがない。 ー俺は奏をそういう風に見てない 「ん、知っとる」 ーむしろ、怖いと思ってる 「うん。」 ーけど優しいって、思ってるよ 「………………。」 ー好きなのが怖いからってあんな風にだかれてたのはすごくムカつく。俺はおもちゃじゃない。心が欲しいなら面と向かって言えよ。 「…………ごめんな。」 ー俺も奏が好きなんだと思う 「え?」 今まで人を好きになった事が無いわけじゃない。普通に優斗が羨ましいと思ったりもしてたし。あの子いいなぁって思うこともあった。 でも、奏と会って、何か安心出来て、あんなことされたのに優しくされると許してしまって、ちゃんと奏が俺を大切にしてくれてるのを感じることが出来て、今思うと、あぁ、これが愛なのかななんて。 きっと許してしまうのも、こんな奏を抱きしめてあげたいとおもうのも。きっと奏を好きだからなんだとおもう。 そこで紙とペンを置いて、奏を見る。驚いて固まってる奏を無視してそっと触れるだけのキスをする。そして口だけ動かして、好きだよと言う。抱きしめることは痛くて出来なかったけれど。 幸せなのだと思った。 俺は勘違いしていた。 2人が好き同士なら恋人になれて、幸せになれるって。この時はそう思っていた。

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