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単純な名前

「んー。分かった、千聖が嫌なら言わん けど女めんどいけん、千聖の妹名前なん?」 え?妹? 「……何で?」 嫌な予感しかしない 「千聖の妹の名前だけ借りるわ この学校やないってごまかせるし」 ん~。どうなんだろうか。ただ黙秘するだけじゃダメなのか? と思ったけど………………。 確かに毎日毎日囲まれるのは相当面倒くさいだろう。特に奏は面倒くさがりだし。 俺もあれに毎日囲まれたらと思うと……鳥肌が立つ。名前でも言わない限りは女子も諦めてくれない……ような気もしてきた。 「……ち、」 「あ、やっぱ、ちがつくんや」 単純で悪かったな! 「…………ちひろ」 「漢字は?」 「千に」 「やっぱ、千つくんや」 単純で悪かったな!!! 「千に優しい!!」 「千優、な。分かった。ほら、教室戻るで カバン取らなやろ?」 奏の後に続きながら廊下を歩く …………嫌な予感しかしない。 「奏君!!誰なの!?彼女!!」 「このクラス!?この学校!?」 「いくつなの!?同い年???」 クラスに戻るなり奏は早速、あーだこーだと言いながら待ち構えていた女子達に捕まった。何だかんだで男子も奏の彼女が気になるらしく、聞き耳を立てている。 それにしても教室に入るなり、投げ飛ばされて机に引っかかって足を打ったから凄く痛い。 「……千聖ぉ。」 優斗が、オロオロしながら話しかけてくる。 「いーのぉ?さっき奏、千聖って言いそうだったよねぇ?」 事情を知ってる(……と言っても、どこまで知っててなぜ知ってるのかは知らない)優斗にそう言われて少し不安になる。ちらっと奏を見るとちょうど話そうとしている所だった。 「んー。この学校じゃないけんね~。」 お、この学校じゃないって言った。俺は予め聞いてたからどうもないけど、それを知らない優斗は俺を見て奏を見て俺を見て奏を見て首を捻っている。忙しい奴だな。 「え!?何校!?!?」 「名前は!!!」 「んー。チヒロ。」 これも大体予想していたから俺はどうもないけど、これまた優斗が俺を見て、ふるふるしながら口を閉じきれていない。俺の妹ももちろん知ってる優斗が何か可哀想になってきた。 ふと千優の事が浮かんできた。 中学で上手くやってるのかな?……あいつ。

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