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【ち】で【千】
気にするんや。
奏くぅん
なんやん、その変な飼い主に育てられた犬みたいな鳴き方。キモすぎて鳥肌立ちそうなんやけど。
1週間くらい囲まれて、質問攻めにあっとった俺はめんどくなって、恋人がおるって言ったんやけど、千聖ち言う前に何故か千聖に止められた。
それに、何で言うんだって怒っとって、何か納得行かんとやけどな~。
話したら、千聖は男なんを気にしとるらしくて、どうやら俺達の関係を周りに公言したくないらしい。俺は気にせんけど。千聖を大事にしたいち思っとるしな~。
でも、正直、それを差し引いてもがんめんどい。毎日毎日飽きもせんと。安心せい。心配せんでも誰がお前らみたいなん選ぶかっち。
かと言って、千聖がおるんに、別の名前出すんも気が引けるし。誤魔化してずっと女子の相手すんのもがんめんどい。
……それに千聖の事やけん何か、下手に女子の名前出したら、たとえそれがテキトーに言った花子とかでもめっちゃ気にしそう。いや、するんやろな~。
…………あ!
「分かった、千聖が嫌なら言わん
けど女めんどいけん、千聖の妹名前なん?」
妹の名前ならよかっちゃなか?
「……何で?」
「千聖の妹の名前だけ借りるわ
この学校やないってごまかせるし」
千聖は明らかに怪訝な顔をしたけど、目を横にして考えたり、げっそりしたり、納得したり、
おもろすぎる。百面相。
そして、意を決したらしい。
多分、おかん『千花(ちはな)』やったし、『千聖(ちさと)』やし【ち】ついて、【千】使うんやろーな。
「……ち、」
「あ、やっぱ、ちがつくんや」
千鶴とか千歳とか千夏とかやろか
「…………ちひろ」
あー『チヒロ』な~。それもあったな。
「漢字は?」
正直、漢字何か別にどげんでんよかばってん、興味本位で聞いてみる。ここで千使わんやったらおどろきやろ?
「千に」
「やっぱ、千つくんや」
やっぱ、千つくよなー。
千尋とかやか?
「千に優しい!!」
へぇ、そっちなんや。
「千優、な。分かった。ほら、教室戻るで
カバン取らなやろ?」
千聖はまだ百面相しとって俺の後ろをついてくる。可愛ええ。
そして教室に戻ってまた質問攻めにあう。
チラチラ千聖の方見よると優斗も心配そうに千聖に話しかけとる。俺が『千優』ち言うた時の優斗はなかなかウケた。それ見とる千聖も達観しとってほんまおもろいわぁ。
名前言うたらおさまるやろーちおもとったけど、意外と上手くいかんもんち俺が気づくんは次の日やった。
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