47 / 108

【ち】で【千】

気にするんや。 奏くぅん なんやん、その変な飼い主に育てられた犬みたいな鳴き方。キモすぎて鳥肌立ちそうなんやけど。 1週間くらい囲まれて、質問攻めにあっとった俺はめんどくなって、恋人がおるって言ったんやけど、千聖ち言う前に何故か千聖に止められた。 それに、何で言うんだって怒っとって、何か納得行かんとやけどな~。 話したら、千聖は男なんを気にしとるらしくて、どうやら俺達の関係を周りに公言したくないらしい。俺は気にせんけど。千聖を大事にしたいち思っとるしな~。 でも、正直、それを差し引いてもがんめんどい。毎日毎日飽きもせんと。安心せい。心配せんでも誰がお前らみたいなん選ぶかっち。 かと言って、千聖がおるんに、別の名前出すんも気が引けるし。誤魔化してずっと女子の相手すんのもがんめんどい。 ……それに千聖の事やけん何か、下手に女子の名前出したら、たとえそれがテキトーに言った花子とかでもめっちゃ気にしそう。いや、するんやろな~。 …………あ! 「分かった、千聖が嫌なら言わん けど女めんどいけん、千聖の妹名前なん?」 妹の名前ならよかっちゃなか? 「……何で?」 「千聖の妹の名前だけ借りるわ この学校やないってごまかせるし」 千聖は明らかに怪訝な顔をしたけど、目を横にして考えたり、げっそりしたり、納得したり、 おもろすぎる。百面相。 そして、意を決したらしい。 多分、おかん『千花(ちはな)』やったし、『千聖(ちさと)』やし【ち】ついて、【千】使うんやろーな。 「……ち、」 「あ、やっぱ、ちがつくんや」 千鶴とか千歳とか千夏とかやろか 「…………ちひろ」 あー『チヒロ』な~。それもあったな。 「漢字は?」 正直、漢字何か別にどげんでんよかばってん、興味本位で聞いてみる。ここで千使わんやったらおどろきやろ? 「千に」 「やっぱ、千つくんや」 やっぱ、千つくよなー。 千尋とかやか? 「千に優しい!!」 へぇ、そっちなんや。 「千優、な。分かった。ほら、教室戻るで カバン取らなやろ?」 千聖はまだ百面相しとって俺の後ろをついてくる。可愛ええ。 そして教室に戻ってまた質問攻めにあう。 チラチラ千聖の方見よると優斗も心配そうに千聖に話しかけとる。俺が『千優』ち言うた時の優斗はなかなかウケた。それ見とる千聖も達観しとってほんまおもろいわぁ。 名前言うたらおさまるやろーちおもとったけど、意外と上手くいかんもんち俺が気づくんは次の日やった。

ともだちにシェアしよう!