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マナーモード
カフェラテ美味しかったなぁ。
俺、ブラックコーヒー飲めないもん
奏料理上手いなぁ、すげー
そんなことを考えながらキッチンに消えた奏を見送って。ふと、思った。
…………あれ?何で俺、絆されてるの!?
え?違うよね?ん?違うよね!?
俺レイプされたんだよ?もっと怒って良くない?こんなにされてさ?何褒めてんの!?
え?馬鹿なの!?俺、馬鹿なのか!?
「千聖?どげんかしたと?」
「……。」
戻ってきた奏が長い体を折り曲げて覗き込んでくる。優しい声には騙されないぞ
「千聖?」
かといって、わざわざ険悪にする文句も言えずにカバンは?と聞いた
「ん。待っとって」
すぐに俺のカバンを持って来て隣に置いてくれた。何でカバンかと言うと特に理由はない。
なんでもいいから口実的なものが欲しかった
それで、カバン。
だってここにそれ以外に俺が口実にできるのトイレしかないけど、1人じゃいけないじゃん!
カバンの中には筆箱と今日貰ったプリント数枚とハンカチと、携帯しか入ってない。
ここは……。携帯でしょ!!
奏は一連の動作をずっと横に座って見ている
そこで、携帯に何かの通知があることを知らせるランプが点滅していることに気づいた
学校ではマナーモードにしていたから、そのままで気が付かなかったのだ
見ると、母さんからの電話とメールの怒涛の通知だった。妹や父さんからも何件か
「うわっ!やばい、」
「どげんかした?」
「マナーモードで、気づかなかった
母さんからの…………。」
「……。取り敢えずかけたら?」
「やっぱり。そうだよな。」
覚悟を決め通話ボタンを押すと
2コールで出た。
え、はや!距離あんのに……。
「あ、もしも」
「千聖!!!!!あんた、こないな時間まで電話出らんとかどーゆーことね!!!!」
たまらずスマホを耳から離す
「あ、あの、」
「午前中までのはずやのに!!電話もメールも返さんし、心配したとよ!もーー!!!」
「い、いや、あの、だから」
「大体入学式1人も不安やったのに、千聖がこんでええとかゆーけん、もぅ!!」
「す、すみ」
「で!理由聞こか???」
こ、怖い。
隣の奏も若干引いている。
「あ!あんな?入学式終わってクラスの奴とカラオケ行ってな?それで気づかんやってん。」
「こんな時間まで?」
「いや、ほんまはもっと前に終わってんやけど、友達ん家に泊まろうって話になって
今、友達ん家やねん」
「え!?泊まり!?誰んち??優君?礼君?」
「んー。新しゅう友達なった奴」
「はぁ!?!?ちょっ!ちょっと代わりなさい!!!」
「え、誰に?」
「そのお宅の親御さんに決まっとるやろ!!」
そこでチラッと奏を見た
電話の設定は小さめなのに母さんの声がでかくて、ほとんど聞こえているらしく、
ふるふると首を振っているので親はいないのだろう。確かに親がいるのにあんなことされてもたまったもんじゃないけど!
「でも、そいつも一人暮らし」
「…………女の子?」
「なわけあるか!!」
「じゃあ、その子に代わって!!」
奏を見ると手を差し出しててそこにスマホを乗せる
「お電話代わりました。初めまして、千聖君と仲良くさせて頂いてます。村主奏と言います」
母さんはボリュームを落としたらしく何て言ってるのか分からない。
「いえ、そんな。実はもっと話がしたいと無理に頼んでしまって、ご心配おかけして申し訳ないです。」
普通の敬語でスラスラと綺麗な発音で話す奏は何かかっこいい。
「お互い一人暮らしで、不便な事もありますので、その点助け合えたらいいなと、ーーー
はい。ありがとうございます。ーーーーー
はい。では失礼します。」
んっとまたスマホを渡される
「あ、もしも」
「千聖!!奏君めっちゃ礼儀正しい子やんね!気に入った!!!これからも仲良くね!」
「…………。」
その子にレイプされたとは言えない
「じゃ!また連絡するね!!」
「え、あ、うん。」
ブツっと電話が切れる。まるで。
嵐かよ…………。
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