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遠い声
学校に行くと誰もが奏を見る。
中にはコソコソと話し出したりする人もいて、いい気持ちがするものでは無い。昨日の事があったからか、女子達も近づいて来ないし。
当の奏はあれから明らかに不機嫌で……
俺は余計に心労が増える。
「千聖ぉ~!奏ぇ~!」
来た!神かよ!
とっとっとと軽い足取りで優斗が駆けてくる
「……何?」
「わっ!奏機嫌悪いねぇ?いいけどぉ!
明日俺の誕生日パーティするんだけどぉ
2人も来るでしょ?場所は俺の家!」
え?
「……何で明日なんだ?誕生日明明後だろ?」
優斗の誕生日は4月29日だぞ?
今日26じゃん。
「パピーが月曜日遅いからぁ、土日の、どっちかしかケーキ作れないんだってぇー!明後日でも良かったんだけどぉ、礼が日曜用事あるからーって!それで明日なの。明日は学校ないからいーよね??」
毎年、優斗の家では優斗のお父さんが誕生日ケーキを作っているんだけど、珍しいな優斗の誕生日に揃わないのは。
「ふーん?あ、でも誕プレ用意してない。」
土日で用意するつもりだったしな
「あ!いーよ!今度ね!!」
「…………図々しいな、お前。」
少しずついつもの自分っぽさを思い出す。
今まで張り詰めていた感じが優斗のおかげでかなり楽になった。
のに、
「俺はパスでよか?」
振り返ると、机に頬杖つきながら少し冷たく奏が言っているのが見える。
俺は萎縮してしまったが優斗はえぇー!!と言って奏に文句を言う
「何で!!」
「えー?だって誰来るん?」
「俺と!千聖と!礼と!奏!」
「嫌やわー」
それは俺がいるから……なのかな。
「なんでぇ!!」
なおも食い下がらない優斗は奏の袖をクイクイと引っ張っている。
「んー?じゃあ考えとくわ~」
「それこないやつぅ!!!」
ワーワーと優斗が騒ぐ、ハイハイと奏が宥める。でもとても遠くに聞こえる。
何かに包まれるように、責められるように、どんどん重くなっていく気がする。
やっぱり、奏、怒ってるよね。
あんな事言っちゃったから。
せっかく、知ろうとしてくれてたのに
奏の家、行きたくないなぁ。
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