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行かない

「…………行かない」 「は?」 放課後、校門を出たあたりで急に千聖が行かんち言い始めた。 朝から、ザワザワと言うヤツらに心底うんざりしとったし。何より千聖が何か隠しとるのが気に入らんやった。 嘘つくの下手いけん、全然隠せてないのに。 挙句にカルボナーラとか言い出して、正直腹たった。 学校来て、優斗に心底安心しとっとも。 俺に聞かれないようにビクビクしとるとも。 俺に言えん事って何なん。 「何で?」 少し苛立ちも混ざって高圧的になっとる自覚はあるけど、どうしよーもない。 「……今日、よ、用事が」 「無いやろ?」 「……ゆ!優斗の誕プレを」 「今度でいい言うとったやん」 下を向いて、俺と目を合わせようともしない ほんと何なん?? 理解しようとすればするほど、足りないものが際立ってしょうがない。それを補おうとすればするほど、無力さや傲慢さを自覚してしまう。 交差しない心は、苛立ちと虚しさしか産まない 「……はぁ。もうよか。勝手にすればよかやん?よーわかった。千聖が俺を信用してなかってね。」 「っ、違っ!」 スっと背を向けて歩き出す。 ムカムカが全身を回るのに、包まれとるのは寂しさやなんて、馬鹿馬鹿しくて笑いすら出そうだ。 今度は上手くいくち思とったのに。

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