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うるさい
さてとっと。
千聖が部活に行ってしばらくした頃にようやく立ち上がる。あれ以来女子達はあんまり話しかけてこんごつなって正直がん楽やった。
それにしても部活を見に行くちゆーた時の千聖の顔おもろかったなぁ。
それを思い出してついふふと笑ってしまう自分が何か新鮮やけどキモイ。
「ねぇ、奏……くん。」
視線だけを動かすと俺がキレた時に泣いて教室を出て行った女やった。
「ん~?何?」
比較的穏やかな声を出して、少し女の方を向きながら机に寄りかかった。ちょうど椅子みたいになって座り込む。
「あ、あの!」
顔を赤らめながら真ん中の女が堰を切ったように泣きながら喋り出した
「この前はごめんね!プライベートなのにズケズケと!でももうしないから!……………………ごめん!えっと、だから話しかけてもいい!?!?」
え、嫌なんやけど。
でも、ここで邪険にするんはちゃうしな~
「いや?こっちこそ、言いすぎたけん。あん時なぁ~イライラしとったんよ。」
そこまで言ってぱぁーと明るくなる女達に特に湧く感情は無かった。
「奏君!じゃあ一緒に帰ろー?」
こいつら調子よかな。
「んー、俺千聖の部活見に行くんよ!悪かけど、また」
今度、と続く言葉は言えんかった。
きゃーと盛り上がる女達。
「え!?千聖君バスケ部正式に入ったんだ!!やった!!」
「千聖君もいいよねぇ!硬派!クール!」
そう。千聖もあれでいて人気があるんよ。
艶がありしなやかで柔らかそうな黒髪に
優しそうなタレ目、整った顔立ちに、特に騒ぐわけでもなく物静かに物事を見て。
しかも、エロい。
これは俺だけが知っとれば良かとばってん
「えぇー。ほんとにマネージャーになろっかなぁ。」
「アリサ、なる?うちもなろっかな?今年の1年レベル高いよね!千聖君に優斗君に礼君!」
「あの3人幼馴染なんだって!優斗君が言ってた。」
「やばっ!正直あの顔なら誰でもいいよね!」
………………。
一気に音が遠くなる。別に女達と話すのが楽しかったなんてことは欠けらも無いが。
「奏君一緒にいってもいい??」
「……あぁ。勝手にせーや。」
少し俺のトーンが落ちても女達の盛り上がりは衰えなかった。
これやからこーゆー女は好かんとや。
うるさいなぁ。
この後俺は、意識することなく途中参加の女も連れて結構な人数で体育館へ行くことになった。
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