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歓声と悲鳴
ギギギ……。
あんまり使わんみたいで硬い扉
なんやこいつ。かた。
少し腕に力を込めて扉を開くと少し広めのスペースと手すりが囲むようにしてあるのが見えた。この女子の量やから下から見学したんじゃ邪魔やとおもて上から来たんは正解やったな。
上の手すりから覗き込むと、あまりの観客に驚いてる奴らとギャラリーが嬉しいんやろうなぁ。キラキラした目をしとる優斗。俺を見て思いっきり顔を歪める礼がおった。
そして、恋人の登場に顔を綻ばせる(呆れとるようにも、睨んどるようにも見えるのは気の所為やろ)千聖が青ズボンの奴と並んでおった。
ヒラヒラと手を振ると左頬をひくつかせて、こっちを見とる。そげん嬉しかかぁ。
それから千聖はチラチラとこちらを気にしながらも、やってきた奴らに挨拶したり、優斗と礼と他何人か多分1年とパス練とかダッシュをしとった。
ピピーとシャトルランとかの時のやつの音がして千聖が列に並ぶ。
何か緊張しとるみたいで優斗に励まされとったのに睨んどる。励まされるのは恥ずいらしい。
試合が始まって、俺にもすぐに分かった。正直千聖がバスケに自信あるち言うた時そこそこを予想しとったとやけど。多分千聖は天才のうちに入ると思う。流れるようなボールさばきにブレないシュート、柔らかくしなやかな身体を使った動きは他とは別格や。
優斗と礼はさすがと言うべか千聖に合わせることが出来とるけど、他2人は足でまといになっとる。敵チームも千聖のスキルに気を取られてまともなプレーやない。
あまりの凄さにほとんどのやつが息を飲んどったり、歓声を上げたりする。
でも俺は気になることが2つあって、千聖を見ながらも何となく胸くそ悪さが拭えない。
こん時に動けば良かった
休憩を2回したあとの、3クォーター。
千聖が今日何度目か分からないシュートを決めた時、千聖をゴール下で待ち伏せしてブロックしたように見せかけた敵チームの奴の1人が、バランスを崩したかの様に千聖に倒れかかった。
ダァァン!と物凄い音がして次に見えたのは千聖を下敷きに寝転がるそいつやった。
きゃゃーーーー!!!!!!!!!
と次に聞こえたのは歓声やなくて悲鳴やった。
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