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怒った豹。後に鬼。
久しぶりに千聖と礼と3人揃ってバスケが出来て凄く楽しい!!!千聖は相変わらず凄くいし、楽しそうだし、俺も負けてられないなぁ~。
ここに来た時に女子の多さにばっか気を取られてた奴らも千聖しか気にかけなくなった第2クォーター終わりあたり、
「そろそろ黙らすか」
相手高校のリーダー格、ゼッケン5番が不敵に千聖を見ながら言った。千聖は礼のシュートを褒めてて気づいてなかったけど、俺は聞こえてた。元々相手校の何人かは悪い噂が耐えないらしくて、先輩から気をつけろとは言われていたけど、上級生の話だと思ってた。
ダァァン!
「千聖!!」
「千!?」
練習試合でここまでするとは思ってなかった。
「いってて」
ニヤニヤしながら千聖の上から起き上がるこいつ。千聖は頭を強く打ったらしく、頭を抑えながら立ち上がることなく悶えていた。
礼がすぐに駆け寄って千聖の肩に手を置きながら声をかける。
「おぃ!!!お前わざとやっただろ!!!!!!」
睨みつけてもこいつの感じは変わらない
「はっ?なんの事?足が滑ったんだよ事故でしょ?…………あぁ、ね?謝れって?はいはいごめんねぇ??」
「てめぇ」
殴りかかろうとした時
「桜庭!」
主将が俺の手を取った。
「確かに、こまめにモップがけしてなかった。そっちは怪我ないか?」
は??
「キャプテン!こいつわざとで!」
「さっすがぁ。部長さんは分かってるぅ~次から気を付けてね?」
イライラが止まらない。
「桜庭、この試合の開催はうちで、管理責任は俺だ。こっちに非がある時点で責めることは出来ん。」
「でも!」
「殴ったらバスケ部辞めさせるぞ。」
クソっ!!イライラが止まることも、スッキリすることもない。未だに苦痛の表情で床に倒れている千聖を見て、せめてわざとだって分かっているのに何も出来ない自分を殴りたくなる。
「じゃあ、」
強くもないのにスっと通る綺麗な声がして皆一斉に顔を向けると柵にもたれながら、こっちを見下ろす奏がいた。穏やかにも、笑っているようにも見えるのに、俺にはハッキリと怒(いか)りが見えた。背筋が震えて、骨が痛い気がする。
奏はすっと起き上がって柵に手をかけるとフワッと飛び上がった。周りの女子達が驚き、きゃっ!と言う中で
ストンとここは本当に体育館か?と思うほど静かに奏は降り立った。静寂の中奏はストストとこっちに歩いてくる。
まるで猫みたい…………いや、豹だ。
5番の目の前に立った奏は少し微笑んだ。
さすがに190もあると5番も見上げるしかなく、5番にすら見下げられてた俺は何かちょっと悲しい。だってこれだけで奏が優勢にみえるし。高いっていいなぁ。
「…………じゃあ、俺にさせてーなっ!!」
ガンっと音がして5番が吹っ飛ぶ。さっきまでの微笑みをスっと消した奏は…………もう、鬼だ。
ごほっと血を吐きながら咳払いする5番
どうやら口の中が切れたようだ。
「…………ぉい!」
主将が、奏の肩に手を置くと、
「俺、バスケ部ちゃうんで」
主将の手を軽く払い、千聖に近づく奏。
「……千聖。保健室行こか。」
スっと退いた礼が奏に何か言うけど聞こえない。
軽く頷いた奏は千聖を軽くお姫様抱っこして立ち上がった。
千聖が弱々しく奏に手を伸ばした気がする。てかした。抱き上げられた千聖は奏に身体を預けぐったりしている。
「あ、そうそう。俺は謝らんで?」
千聖をお姫様抱っこして2、3歩。止まった奏は5番を見下しながら体育館を後にした。
こっっっっわ!!!
力を入れないと歯がガクガクしそうだ
決めた。奏は敵にまわさない。まわせない!!
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