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繋がる手には
「…………ん、」
「……千聖?」
目を開くと優しく俺を見る奏がいた。
あれ?どうしたんだっけ?
確か、誰か倒れかかってきて、頭痛くて、礼と優斗の声がして、そして、
「あぁ!い"っ……」
ったーーーーー。
ズキズキと頭が痛む。
ん?てか、
そういえば俺、何か奏に抱きついたかも……
「千聖、落ち着いて、ほら」
言われた通りにふぅと息を吐くと右手が暖かくてなんと言うか幸せだった。分かってはいた。分かってはいたんだけど。
少し動かすとやっぱり手が繋がってて。
「……奏。手。」
「え?あぁ。千聖が離してくれんけんがら」
…………嘘だろ?
でも嘘とも言えない。だってこんなに幸せに包まれてるし、口では言いながらも離したくない。
「うそうそ。俺が離したくないけん、も少しこんままでもよか?」
「…………しょうがないな」
素直じゃなくて、可愛くないよな、俺。
奏はやった、と言いながら嬉しそうに繋いだ手を見ていた。
話を聞くとここは病院で、頭を打った俺は運ばれたけど異常はなかったとのこと。先生も居たけど、奏が残ると行ったのでもう居ないらしい。
「……それで、千聖。具合はどげん?」
「大丈夫だよ。奏、ありがと。何かあんまり記憶ないけど色々してくれたんだろ?」
「……あぁ、うん。まぁ?」
病院まで一緒に来てくれたり、検査中待っててくれたり、起きるまでそばにいてくれたり、心配してくれたり…………
何か嬉しいな。奏が俺の為に。
(まぁ、そんなもんじゃないとは後で知る羽目になるけど)
「それより、どげんもなくて良かった。」
少しくすぐったいけど、包まれるようなそんな感じ。家族や友達の心配とはまた少し違う。
繋がった手は離したくない
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