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打ち直し

ペちペちと頬を叩かれて、意識を戻す。 覚醒した脳にまず初めに送られてきたのは酷い倦怠感と痛みがごちゃ混ぜになったきもちわるいものだった。 「あ、夏目君起きた??じゃ俺ら帰るね? ちなみに、写真とか動画とか撮ってないから安心しなよ~じゃあねぇ~」 「今回は良かったっすね~」 「色々試せたし、素質あるよね~彼」 気配が消えてしばらくして、痛む頭を必死に起こし、重い体を引きずって鞄を手繰り寄せる。3歩程度離れた鞄を取るのにかなりの時間を有した。 携帯を開くと優斗と、礼と、そして奏から連絡が来ていた。また涙がポロポロと出てくる。 携帯で時間を確認すると8時半を少しすぎたところで思ったより時間が経っていないことに驚いた。あんなに長く感じたのに。 奏からのを開く。 "千聖~連絡せんでごめんな? もしかして拗ねとる? 千聖にめっちゃ会いたいわー 今から会おやー?" なんでだろう?滲んでよく見えないや。 重い指を動かして、いつもより時間をかけて文字を紡ぐ。 "痛いよ、助けて" いいや、そうじゃない "なんで来てくれなかったの?待ってたの" に。…………違う、責めるなんて間違ってる "会いたい" 会いたい。けどこんな姿を見たら………… 何度も何度も打ち直して "大丈夫だよ、今日は会えない、ごめん" 文才ないなぁ、と声を出して空笑いする 涙で画面が見えない。 震える指で送ると直ぐに電話が掛かってきた。上手く誤魔化せる自信が無くて、出れなかった。昔から演技は苦手なんだ。 "千聖?今どこ?" "まだ学校??" "どうしても会いたい" "家に居る?" "なぁ、お願い電話出て?" "声が聞きたい" 次々に来るメッセージと着信。 馬鹿。そんなの俺の方が会いたくて、声が聞きたい。 "俺に会いたくない?" 違う!!!そうじゃない…………。 また電話が来る。 俺は、………………取ってしまった。 「……っ!、千聖!?!?千聖??どないしたん?今どこ??………………千聖??」 やっぱり出るべきじゃなかった。文字ですら涙が溢れていたんだから、奏の声なんて聞かなくてもどうなるか分かったはずなのに。 嗚咽を抑えようとすると今度は「大丈夫」の声さえ出ない。 「…………千聖、今どこにおるん? お願い、会いたい。」

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